お知らせ
第2回とちぎ健康塾(講演録)
開催日時
平成21年7月18日(土) 14:00 〜 15:30
開催場所
栃木商工会議所 第2ホール
内容
【講師】 日本小児アレルギー学会理事
獨協医科大学小児科学准教授 吉原重美 先生
栃木県は本邦でも珍しく子ども医療センターが独立しておらず自治および獨協の両医科大学に併設されています。獨協医科大学とちぎ子ども医療センターのアレルギー・呼吸器疾患部門には、ぜんそく、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの多くのアレルギー患児が来院します。現在、日本では3人に1人がなんらかのアレルギー疾患を持っており、アレルギー疾患は国民病とも言われ注目されています。
なぜ増加したのかというと、酪農国であるデンマークで報告された成績があります。生まれてきた赤ちゃんはアレルギーと関係がある「Th2リンパ球」が優位ですが、都会の生活と比較して牛や馬と生活している田舎の赤ちゃんでは、細菌成分であるエンドトキシンという物質が体内に入りアレルギーを起こしづらい「Th1リンパ球」が増えてきます。一方、都会に住んでいて衛生状態がよい生活をしている赤ちゃんは、エンドトキシンが体内に入らないため、アレルギー物質が侵入してくるとアレルギーを起こしやすい「Th2リンパ球」優位の状態が持続され、アレルギーが発症しやすくなります。このアレルギー増加を起こす機序は、衛生仮説と呼ばれています。実際、戦時中戦前の回虫などの寄生虫疾患が多い時代と比べて、最近は衛生状態が良くなったことでアレルギー疾患が増えていることが考えられています。
次に、実際に小・中学校、高校でのアレルギー疾患の罹患率ですが、一番多いのが花粉症を含めたアレルギー性鼻炎で、約100人に10人、次に気管支ぜんそくとアトピー性皮膚炎が5人と多く、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー等のアレルギー患者がいます。中には、アナフィラキシーショックという生命に危険を及ぼすような症状が出現することもあります。アレルギー疾患と一言で言っても上記の多くの疾患を含めてアレルギーがあると総称されています。
我々は、2007年に栃木県内のアレルギー疾患実態調査を行いました。幼稚園、小・中学校、高校で、園児数は1万5040人、児童数は9万6758人で、養護教諭および教諭に回答してもらいました。その結果は、小学生ではアレルギー性鼻炎は9.4%、ぜんそくは5.9%、アトピー性皮膚炎は4.1%、食物アレルギーは2.8%、アレルギー性結膜炎は2.4%で全国統計とほぼ同程度の罹患率でした。
食物アレルギーに関しては給食の特別配慮が必要、すなわち代替食やお弁当を持っていかなければならないという児が、約7~8割の小学校でありました。
さて、上記のアレルギー疾患はひとつひとつ独立していて関連がないのでしょうか。例えば食物アレルギーだけ、アトピー性皮膚炎だけ、ぜんそくだけ、アレルギー性鼻炎だけという人もいますが、アレルギー体質、すなわちアトピー素因を持って生まれてきた児は、上記疾患が次々と連続して発症します。それを「アレルギーマーチ」、「アレルギー行進曲」といいます。アレルギー体質があるお子さんが小さいうちは食物アレルギーによる湿疹がひどく、次にダニの関与するアトピー性皮膚炎、そしてぜんそくやアレルギー性鼻炎が連続的に発症してきます。最近では1~2歳でも最初からアレルギー性鼻炎がある児もいますので、アレルギーの増加とともに早期から合併した症状が出現する傾向にあります。
本日は、その中で食物アレルギー、アトピー性皮膚炎および気管支ぜんそくの治療のポイントについてお話ししたいと思います。
まず食物アレルギーについてお話します。
我々は世界で1番小さい在胎26週、体重600gのミルクアレルギー児を経験したことがあります。血液検査でIgEというアレルギーと関係のある免疫グロブリンが増えていました。ステロイドの軟膏を塗り、アレルギー用のミルクを使用することで皮膚症状も改善し退院となりました。
次に食物アレルギーの種類について説明します。原因として多い食物は、乳児から幼児では卵・牛乳・小麦の順に、学童から成人では甲殻類、魚類、そば、小麦、果物などです。特殊なタイプとして学童から成人に多いものでは、食物を摂取しただけでは症状は出現しないのですが、摂取して運動が加わると、じんましんや息苦しさ、すなわち呼吸困難が出現したりする食物依存性運動誘発アナフィラキシーや若い女性に多い口腔アレルギー症候群があり、果物を摂取すると、口腔内のかゆみのみならず、重症の場合は、のどが詰まるような感じになる特殊なタイプもあります。
原因を年齢別に見ますと、0~6歳において第1位は鶏卵、次にミルク、小麦という順にこの3食品が圧倒的に多く、7歳以上はそば、えび、小麦、魚類というのが増えてきます。年齢によって、アレルギーになる原因食品に差異があるということです。
治療は、30年前は徹底した除去食でしたが、最近は、食べるための最小限の食品除去が推奨されています。徹底除去は小児特有の成長・発達に影響を及ぼします。そこで現在は、食事により強い症状が出現する場合にのみ、必要最小限の除去食治療を行います。その後も、子供の成長を考慮して積極的に除去食の解除をはかることが重要です。また、薬物療法の併用で除去食の緩和とQOLの向上を図ります。QOLの向上はアレルギー疾患すべてに言えることですが、ぜんそくを持っていれば、ほかの子どもたちと同じような運動ができるような治療が必要ですし、食物アレルギーであれば代替食を導入して、ほかの子どもたちと比較して栄養面のみならず精神面・心理面を配慮した治療が必要です。具体的には卵アレルギーがあっても、たとえば生卵は除去しても加熱処理したものや加工品なら摂取可能な場合があり、積極的に食べて解除していくことが必要です。牛乳の場合も同様で、食パン、焼き菓子など加熱処理したものは食べられるのであれば、ミルクが入っているものを全部除去するのではなく、強いもの弱いものを知り、何が食べられて何が食べられないのかをしっかり見極めることが食物アレルギーの治療、除去食の解除には重要です。
それでは食物アレルギーは治るのでしょうか。
赤ちゃんの頃に発症した食物アレルギーの多くは年齢とともに3歳頃までに、除去を解除できる割合が増えてきます。血液検査で調べるアレルギー検査だけではなく、除去を解除できるかどうかは食物負荷試験、すなわち実際に食べてみないとわからないため、その検査を最終的に施行して除去解除が可能かを見ていくことが大切です。年齢によってアレルギーを起こす原因が違うとお話しましたが、ピーナツ、そば、ごま、魚、くだものなど、年長児、成人発症例は耐性化しにくいという成績があり、解除はしにくいでしょう。
食物アレルギーの診断は、例えば離乳食で鶏卵を食べたら症状が出現したという問診に基づき、その後、血液検査で特異IgE抗体の陽性、除去試験で原因食品の除去による症状の改善から診断は容易です。また、治療として同時に主治医の先生とよく相談して、自分の子どもの食事をどうしていけば良いかしっかり訊ねてみる事が重要です。そして、原因食物を除去する場合は、必ずその除去解除の時期についてもしっかりと相談しながら、最終的には食物負荷試験が除去解除の有用な手段となります。
2009年、小児アレルギー学会で、初めて食物アレルギー負荷試験ガイドラインを作成致しました。また、2008年から外来での食物負荷試験も保険適用となり、今後は食物アレルギー児の積極的な除去食の解除のために負荷試験が導入されていくと思います。
次に食物アレルギーの特殊例についてお話します。
栃木県ということで、口腔内アレルギーの中でもイチゴアレルギーについてお話します。
小学校の高学年から果物を食べるとのどにかゆみを感じたという症例です。イチゴ、モモ、サクランボ、ナシ、キウイ、スイカ、メロン、トマト等、次々と症状が誘発され、自覚症状のある果物については、自己判断で除去していたとのことです。こうした口腔アレルギーを持っている方は、シラカンバやスギなどの花粉症も合併していることが特徴です。口腔内アレルギーがある場合、のどが詰まるような感じがした場合はアナフィラキシーショックになりやすいので注意が必要です。
次に、食物アレルギーによるアナフィラキシーについてお話します。
アナフィラキシーとは、食物を摂取したり、ハチに刺されたり、薬物を注射したり、天然ゴムのラテックスに触れたときに、じんましんなどの皮膚症状が出現することが必発で、それ以外に呼吸器症状として、のどが詰まる感じがあり息苦しくなったり、ぜんそくの発作が誘発されて息苦しくなることもあります。その呼吸器症状、のどの詰まりや息苦しさが出現した人のうち3人に1人がアナフィラキシーショックという状態になります。ショックというのはどういう状態かと言いますと意識障害(声をかけても反応しない)や血圧低下などを起こす状態です。
食物アレルギーで、このような重篤なアナフィラキシーショックを起こすこともあります。日本の死亡例を見ますと成人例を含めるとハチが1番の原因となっています。米国では、ピーナッツによる食物アレルギーによる死亡例が多い特徴があります。いずれにせよ、アナフィラキシーショックに対しての注意が必要ということになります。食物アレルギーによるアナフィラキシー症状は、皮膚、消化器、呼吸器、循環器、神経など多彩ですが、呼吸器症状が重要なポイントになります。先程お話ししましたように呼吸器症状である咽頭の絞扼感や呼吸困難が出現したうちの3人に1人がアナフィラキシーショックになる可能性があるため、その前に適切な治療が必要となります。
食物によってアナフィラキシーが起こる時期はほとんど0歳児です。離乳食や母乳を最初に与えたときに起こることが多い。生まれてまもない赤ちゃんがショック症状を起こすとお母さんの脳裏にその印象が焼き付いてしまうということもあって、先程の除去解除に繋がってくるのですが、「また、同様の症状が出現したら本当に心配」ということで、解除がなかなか進まずに、逆に小学校まで除去食対応のまま経過をみてしまう症例もありますので、3歳頃に解除できるポイントがありますので主治医とよく相談しながらこの食物が本当に除去すべきなのか、それとも除去の解除ができるのかという判断をしていくことが重要です。
アナフィラキシーは平均18.59分で起きます。すなわち食物を食べてから30分以内にショック症状となります。ハチも刺されてから10~15分で同様の症状が出現します。そう考えると30分以内の治療が重要です。30分以内にショックを起こしたことのあるお子さんは何らかの薬を持っている必要があるということです。なぜかというと、アナフィラキシーは、1回限りは33%、ひどいと10回以上起こしたりします。通常2~5回というのが6割程度で、このように1回起こした人は何回も繰り返す可能性があります。この事実から、8~9割において患児本人あるいは保護者・家族が食物アレルギーを持っていることで、日常生活に対する不安を感じています。
次に、もう一つの特殊な食物アレルギーとして、食物依存性運動誘発アナフィラキシーについてお話します。
例えば小麦、学校の給食でパンを摂取してもまったく症状は出現しません。ある時、たまたま風邪で体調が悪かった時に、パンを摂取して、その後体育の授業で運動すると症状が誘発されるということがあります。要するに食物と運動が重なって症状が出現する場合を、食物依存性運動誘発アナフィラキシーと言います。全身じんましんや顔面の腫張など、皮膚症状が必ず見られます。これも先ほどのアナフィラキシーと同様、呼吸器や循環器、粘膜等に色々な症状が出現してきます。なお、アレルギーが関係なく運動だけで出現する人もあり、その場合は運動誘発アナフィラキシーと呼ばれています。
上記の食物アレルギーの関与するアナフィラキシーの予防・治療についてですが、病院に受診するまでに、救急車あるいは自家用車でも30分以上かかるという成績がでています。そうしますとプレホスピタルケア、病院に行く前のケアが重要になってきます。それは保育園・幼稚園あるいは学校でも同じことです。そのためには原因食物を摂取してしまい症状が出現した場合には、抗ヒスタミン薬やステロイド薬を服用すべきです。さらに重篤な症状、ショック症状が出現した場合は、体重が15㌔以上あればエピぺンの自己注射が効果的です。このエピぺンは、本人と保護者と救命救急士、医師以外に学校で養護教諭や教師が注射する場合も想定されます。
操作自体はそれほど難しくなく、安全キャップをはずし、大腿部に90度になるように押しつけるだけの操作です。そうすると自然にアドレナリンを注射できます。当大学では約60名に処方していますけれども、実際に使った症例は3例です。その3症例は、14歳、13歳、3歳です。注射は保護者が打ったり、自分自身で打ったケースもありますが、「使って良かった」ということを本人や保護者から聞いています。
さて、次にお子様が食物アレルギーを持っている場合、2番目のお子様を予防できるか否かについてお話します。
結論から言いますと母親の妊娠中や授乳中の食物抗原除去というのは予防効果がないということです。米国はピーナッツによる死亡が多いので、できるだけそれを摂取しないようにということが推奨されています。原則として、食物アレルギーのお子さんがいても、2番目のお子さんに対する予防法はありません。しかし、2番目のお子さんに母乳やミルクをあげたときに食物アレルギーの症状が出現した場合には母親や本人のミルク制限が必要になることもあります。
さて、次に食物アレルギーと関連のあるアトピー性皮膚炎についてお話します。
乳幼児では食物アレルギーからアトピー性皮膚炎が生じやすいけれども、学童になってきますと食物アレルギーはあまり関与しなくなってきます。その場合、アトピー性皮膚炎の1番多い原因はダニです。日本の環境は特別で、海外ではダニによるアトピー性皮膚炎やぜんそくが少なく、欧米ではイヌやネコが原因のことが多い。韓国は、オンドルがあることにより、床が乾燥しているためダニが生息しにくいということがあり、日本では諸外国と比較してダニによるアレルギーが多いのが特徴です。
さらに、アトピー性皮膚炎の原因は、生まれつきの体質(アトピー素因)遺伝的要因と、ダニ、ほこり、汗、汚れ、環境、ストレス、食事、などの環境要因の両者が関与しています。
アトピー性皮膚炎の治療としてステロイドの軟膏をしっかりと塗り、抗アレルギー剤などの飲み薬を併用していきますと、皮膚の症状が改善されてきます。そして薬を減らすためには、スキンケア、環境整備の併用も重要です。上記治療により、丈夫な皮膚まで改善した後に、今度はそれを守るために保湿剤を使用します。色々な原因があっても、ステロイド軟膏をしっかり塗り、コントロールしていくことがアトピー性皮膚炎治療の重要なポイントです。欧米および本邦のガイドラインも的確に早期にステロイド軟膏を使用することを推奨しています。ステロイド軟膏の強さは5段階に分かれていますので、まずどの強さかを選択して十分な量を早めにしっかりと塗布することが重要です。注意点としては中途半端なステロイドの使用はしないということです。ですから、1回良くなった状態を如何に維持していくか。例えば強い軟膏を使っていたとしたら、次には弱い軟膏で抑えていく。症状がない状態でも維持する。皮膚炎が抑えられず皮膚の破壊が進んでひどい状態になったり、皮膚が黒く厚くなったりするのは、塗りすぎではなくて、皮膚症状がコントロールされていないからですので、しっかりとした正しい外用療法を行うことが大切です。
塗り方のコツは、人さし指の第一関節までの軟膏を両手分。ローションでは1円玉大で両手分。それから、塗りかたにも気をつけましょう。さらっと皮膚の上に塗るようにしたほうが効果的ですので、少し“てかてか”するくらいの塗り方が効果的です。それから夏は汗を流して肌を清潔に保つこと、シャワーが重要です。それから、冬は潤いを保ちかゆみを防ぐということです。アトピーがなくても自転車で10分ぐらい手袋せずに走れば、手が乾燥して、温まるとかゆみがでますが、アトピー性皮膚炎の患者さんはセラミド成分が少ないためより悪化しやすくなりますので、十分に保湿剤を塗ることが重要なポイントです。
ここから、次にぜんそくのお話をします。
当科では毎夏ぜんそくキャンプを実施しております。ぜんそくの小学校1年生から6年生までを対象に参加していただいております。医学生や看護学生も参加して、水泳などの運動療法を取り入れています。また、一緒にカレーを作ったり、キャンプファイヤーをしたりする中で、煙に対する指導や、以前ぜんそくだった看護学生、医学生、看護師、医師が、体験談を話すことにより子どもたちを勇気づけたり、長期管理の治療として、ピークフローを正しく吹けているかをチェックしたり、吸入療法が正しくできているかなど、日頃の診療時間では診ることができない細部にわたり、患児への再指導を実施しています。なぜ小学1~6年生の参加が重要かと言いますと、思春期までにぜんそくをコントロールする必要があるからです。思春期まで持ち越したぜんそくのコントロールは本当に大変です。私の経験した症例をお話します。ある寿司屋の息子さんA君でしたが、その子は高校生になって、寿司屋を継ぐために、交友関係に力をいれていました。友達とマージャン中に、その中の一人の友達がたばこを吸ったため、そのたばこの煙で発作を起こしてしまい、携帯用の気管支拡張薬であるβ2刺激薬を呼吸が楽になるため頻回に使用してしまったのです。本当は病院を受診し、急性発作の治療をすべき重症だったにもかかわらず、最初の吸入で楽になってから1時間くらい、次に又苦しくなってきて2回目の吸入を施行、一時的に呼吸苦は改善しても20分程度、また苦しくなって吸入すると10分程度しかもたない、また、次に吸入すると5分しかもたないという状態で、瀕死状態になって病院に運ばれた思春期喘息の患者でした。本人とご両親に、ぜんそく死についてじっくりと話をしたのですが、同様のことを2回繰り返しました。しかし、現在35歳で、しっかりと働いています。薬剤も定期的に吸入・内服して、急性増悪の場合にしっかりとした正しい治療により前回のような誤りは起こしていないということです。思春期は特別な時期で、医師や親の言うことも聞かない年齢なのです。そのため、発作を起こさせないための気道炎症抑制が根本治療だと話をしても、なかなか実行してもらえないことが多く、苦しいときだけ一時的に頻回にβ2刺激薬を吸入してしまうだけの危険な治療になってしまうことがあります。上記のことから、できれば小学校までに喘息の長期管理薬治療の重要性を自覚して、吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などの抗炎症薬を使用しぜんそくを積極的にコントロールしていくことが重要なポイントです。最近では、小児のぜんそくも成人と同様に治療管理ガイドラインが作成されており、治療により難治化・重症化する喘息を阻止することが可能になってきています。
近年の小児ぜんそくの特徴としては、1歳未満の低年齢の喘息発症が18%から23%に増加し、さらに3歳までに80%が発症しています。そのため、より発症早期の乳幼児期からしっかりとした気道炎症抑制薬による治療の長期管理をすることにより、小学校までにぜんそくをコントロールできる割合が増えています。
小児ぜんそくの治療目標は、最終的には治癒を目指しますが、通常は日常のコントロールを目標とします。すなわち、β2刺激薬、気管支拡張薬を使用しなくてもよい。昼と夜を通じて症状が出ない。学校・幼稚園を欠席しない。スポーツを含めた日常生活を普通に行うことができる。肺機能が正常である。ことが目標となります。小児の場合、運動時にぜんそくの発作が起きるような場合は、十分なコントロールがなされていない証拠ですので、しっかりとした治療のステップアップ、見直しをする必要があります。
次に、ぜんそくの予後についてお話します。
どういう場合に治癒したかと言うと、治療薬を全部中止できた後、5年間全く無症状であれば臨床的に治癒したことになります。しかし、成人の患者さんの10~20%は「小児ぜんそくを持っていて一旦良くなったが、また悪くなった」という人です。このような症例は、ぜんそくと一生うまく付き合っていかなければなりません。すなわち、アレルギーの関与する慢性疾患では、ある程度まで症状をコントロールすることにより通常の生活が可能となれば、健常人と変わらないということになります。すなわち、ぜんそくと、お友達のようにうまく付き合っていくことが大切です。
しかし、発作時の治療しか行わず、発作予防の治療を行わない場合には、空気の通り道がどんどん狭くなって炎症が進行して気道粘膜も腫れてきます。これがまた元に戻るくらいの発作、すなわち年に1回程度の発作の場合は、その発作時の治療のみで良いのですが、毎月発作があるような場合は、気道の抗炎症薬を用いた長期管理なしでは、気道が綺麗な元の状態に戻らなくなります。気管支が土管のように硬くなってきて、常にぜんそく発作が起こりやすい状態となってしまいます。一旦綺麗になれば、たばこ・線香・花火の煙等を吸っても発作が起きませんが、中途半端な改善の状態ですと、上記の刺激因子によって、発作が起きやすい状態が続きます。そのため月1回以上発作を起こすような場合は、長期的に吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬による治療が必要になります。また、重症度や年齢によっても治療は異なってきますので注意が必要です。
保護者側の注意点としましては、ぜんそくの症状に対して過小評価してしまうことです。意外に、症状を軽くみる傾向が多いようです。すなわち「発作がありましたか」と聞くと、「ないです」という回答が帰ってくる場合が多く、具体的に「ここ1週間で夜中に咳が長く続き苦しかったことがありますか」と聞くと“YES”と回答される場合が決して少なくないと言うことです。症状の過小評価は、過小治療につながりますので、回避しなければなりません。
喘息コントロールに対しての客観的な指標は何かというと、学童以上はピークフローメーターや肺機能検査です。乳幼児では、それらが使用できませんので、夜間睡眠チェックノートをツールとした夜間発作症状を把握することが有用です。すなわち、喘息コントロールの指標として夜間睡眠障害が起きているか否かが重要なポイントとなります。さらに、発作時の気管支拡張薬の薬剤使用頻度や急性増悪による救急外来受診頻度もコントロール不良を示すチェックポイントになります。ぜんそくコントロールが良い状態というのは、症状がない状態が長期に続くことで、他の健常のお子さんと変わりない状態ということになります。このように症状を0にするためには、吸入ステロイド薬やロイコトリエン受容体拮抗薬の治療により“炎症を0レベルにする”必要があります。
もう一つの重要な治療法は環境整備です。栃木県内のアンケート調査の結果、ダニ・ハウスダストが一番の原因でしたが、それ以外にも花粉、風邪、食物、ストレス、たばこ、線香、食べ過ぎなどもありました。自分のお子さんが、どういった因子に対して、アレルギーやぜんそく発作が起きやすいのかということを常日頃から観察することが良いでしょう。実際には、日当たりの良い部屋でソファーも拭けるようなもの。カーテンはブラインドにしてほこりがつかないようにする。エアコンもフィルターをつける。などのダニ・ハウスダストに対する環境整備も必須です。
しかし、このような対応も引越しや新築する際であれば容易に出来るかもしれませんが、今ある現状の中でどのくらいできるかというと難しい状況です。環境整備には限度がありますので、神経をすり減らすほど、徹底してやる必要はなく、今は先に述べたような効果のある薬剤が使用可能ですので、それらを併用しながら治療していくことが良いと思います。しかしながら、抗原量が多ければ多いほど発作はおきやすいので、“ある程度の環境整備”は必要だということになります。
すなわち、薬物治療、環境整備、運動療法の3本柱をしっかり行っていくという対応がぜんそくの基本治療になるわけです。
ただし運動ばかり行っても、気道炎症を薬物でしっかり抑えないで運動するとよりぜんそくが悪化します。運動療法の注意点としては、発作が起きてから2週間は運動しないほうが良い。そして、発作が起きていない期間は運動した方が良い。いいかえれば、運動による発作が起きないための薬物治療を毎日しっかりと行うことが大切です。
最後に、学校におけるアレルギー疾患の対応についてお話します。
昨年、日本学校保健会により学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインの一つとして『生活管理指導表』が作成されました。アレルギー疾患児全員の必要はありませんが、原則として学校における管理が必要だと思われる場合には、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、ぜんそくやアトピー性皮膚炎等に対して各々の注意事項を主治医に記載してもらい、学校側と共通の疾患に対する認識を持つことが重要です。すなわち、医療機関だけでは不十分で、学校の先生、養護の先生、栄養教諭の先生や教育委員会、医師でも開業医から病院まで種々の方々の協力で、患児が同年代の健常な子どもと同様の生活ができるように、全員が協力して種々のアレルギー疾患のより良い治療を考えていくことが必要です。
最後に、より良い治療をするために、本人や保護者の治療に対する疑問点があれば、かかりつけの医師に相談して、納得のいく治療を受けてください。
毎年、獨協医科大学の桜が大きく綺麗に咲くのを見るのが楽しみです。なぜなら子どもの成長する姿とだぶらせながら頑張ろうという力が湧いてくるからです。
最後まで、ご静聴ありがとうございました。

