塩谷郡市医師会々長  山 田  聰

2期目の挨拶

 初めに
 本年の4月から塩谷郡市医師会長として2期目を務めさせていただきます。
 1期目の2年間では大人子供夜間診療室を開き土曜の準夜帯にも救急診療を始めたことと、塩谷郡市医師会の一般社団法人への移行を円滑に行ったことくらいしかできず、ただルーチンの仕事をこなしてきただけでした。2期目には私が考える開業医のあるべき姿を皆さんに提示して、そのような医師たちが人間らしく生活していく方法を提案したいと考えています。

 大人子供夜間診療室について
 さて大人子供夜間診療室は順調にスタートを切りました。しかし、現状では準夜の診療は休日と土曜日だけに限られ、1年365日のうち120日余りをカバーできているだけでしかありません。塩谷郡の救急医療を考えた時十分とは言えないと思います。
 むろん当医師会は会員数が全会員で100名程度ですし、A会員が56名と少なくマンパワーで他の医師会に劣ります。無理をして性急に理想的な毎日の夜間診療室の達成を図るべきではありません。しかし理想を理想のままにしておいて努力をしないというのは私のとる道ではありません。理想像があるならどのようにしたらそれが達成できるかを追求していきたいと思っています。会員のみなさんも知恵を絞って体力の許す限りできうる限りのご協力をお願いします。この様な努力は市民との関係を良好にし、ひいては自分たちの信頼につながると思っています。人は自分が望むほど自分を見てくれてはいないが、がっかりするほど見てくれていないわけじゃないと聞きました。地道な努力を買ってくれる人たちがいると考え、少しでも地域医療の理想に近づきたいと思います。

 一般社団法人化と会費の増額について
 一般社団法人化への道は比較的円滑に成し遂げられました。それは事務長の法的な知識と経験さらに献身があったからと考えています。そして池田理事がそれをサポートしてくれました。感謝いたします。新たな塩谷郡市医師会の道を歩んでいきたいと思います。
 それに伴ってわれわれには医師会財政の健全化が求められています。医師会活動はこの10年間先輩たちが積み立ててくれた医師会館建設資金を取り崩して維持されてきました。そして8,000万円あまりあった会館設立準備資金は2,700万円余りとなりました。医師会活動は会員からの会費だけではなく、埋蔵金によって維持されてきたのです。しかし埋蔵金が少なくなってきた今、現在の活動を維持しつつ、将来の不測の事態に備えての活動資金を残しておくためには塩谷郡市医師会費の増額を図る必要があると考えます。
 むろん、執行部も経費の削減を図る計画を立てています。総務会、理事会の開催を年4回から3回に減らすことを始め、できうる限りの経費を削るつもりです。しかし、それでも足りない活動費を会費の増額で賄わなければなりません。以前は休日当番の報奨金の半分を医師会費として徴収してきました。それが過去の潤沢な医師会費の源です。しかし、税務署からいったんは各会員に報酬として渡し、のちに会費として徴収するように指導を受けました。しかし、会費の増額をせず埋蔵金を取り崩すことで医師会活動を維持してきました。埋蔵金が枯渇すると年間400万円の不足に陥ると試算しています。このままでは医師会活動が大幅に縮小される羽目に陥ります。われわれの日常の診療活動を支える事務局を維持することも不可能になります。世の中のあらゆる事態に速やかに対応することが不可能になってきます。県や県医師会からの通達や連絡も会員に十分に伝えられなくなる懸念があります。今行っている活動ができなくなります。
 そこで、このたびわれわれ執行部は2年ごとの2万円の増額をへて、将来的には現在の倍額の12万円にすれば医師会活動を維持することが可能と試算しました。当面平成25年度から2万円の増額を総会で了承いただきました。その後は経費の削減を図り、状況に応じてさらなる会費の増額を行う予定でいます。会員各位には負担になるかとは存じますが、健全な医師会活動を維持するためにはやむをえない負担とお考えくださって、会費の値上げにご理解をくださるようお願い申し上げます。

 今後の医師会のあり方について
 さて、今後われわれの行うべきことは、現在の医療状況を考えると社会的要請にこたえる道と法制的強制に対応する道と二つあると考えます。
 前者は在宅診療問題であり後者は保険請求でのコンピューター化に伴うさまざまの事象です。両者とも医療費の削減を図る方法として考えられたものと思いますが、自分の診療を考えても在宅で一生を終えたいという市民の要請はこれからますます増えるでしょうし、それにこたえることは避けられないわれわれの仕事の一部となると考えています。そのためには早めにその対策を考えたいと思っています。一部の者が過重な負担を負うことなく、患者や一般市民の要請にこたえるには、それを担う各医療機関の拘束時間を減らすことであり、それは診療所間の連携によってもたらされると思っています。
 さらにこれからはコンピューター化によりレセプトの突合や縦覧が盛んに行われてきます。その時起こる問題は診療所間病院間での患者の重複診療です。そのようなときレセプトのどちらが主でどちらが従かをめぐって診療所間でトラブルが起こりえます。今のうちから連携と情報の共有化によってトラブルを避ける道をつけておかなければならないと考えています。
 塩谷郡市医師会の大多数を占めるわれわれ医療者は個人経営者です。しかし、単なる競争原理に従っての行動はわれわれの仕事の価値や質を損なうと思います。能力を切磋琢磨して自分の得意分野を売り込み、不得意分野は得意な人に任せるような診療を行っていかないと専門志向・能力志向の激しい現代の患者さんからわれら医療者が見捨てられてくると私は危機意識を持っています。共同してことに当たる姿勢が問われてくるのだと思います。
 塩谷郡市ではさくら警察署と矢板警察署の検視医の問題が突如起こりました。それを有志の先生たちが連携して本来の警察医の先生を援助しようということになりました。一部ですが連携ができたということだと思っています。しかし、手を挙げた先生方の数は余りにも少なく、自分の地区の検死もできない事態が生じかねません。その仕事を引き受ける労苦を考えるのではなく、地区への責任を思いやりもっと多くの先生方が参加すべきと考えます。一人ひとりの負担を少なくするためには多くの先生方の参加が必要になってくるのです。検死のような仕事は専門に関係なく医師であるならば避けて通れない道かと考えます。この連携の輪を拡大していけばわれわれがもっと働きやすいようになると信じています。
 在宅診療医しかり検死医しかり夜間救急医しかり、多くの先生方の参加で塩谷郡市の医療は守られ、一部の先生の過重な負担がなくなるのです。一般の人々のように夜間や休日は自由に過ごしたいと考えるのは理解できます。しかし、われわれの仕事は社会に欠かせないインフラです。すべての時間を捧げなくていいですから、その一部の時間を社会に捧げてください。それがひいてはわれわれの職業の価値を高めると考えます。

 医師会活動に関心を持つ市民の皆さんへ
 さてこの文章は一般の方の目に触れます。そこで一般の方にお願いがあります。われわれの活動を注意深く見守ってください。目に余ることにはご批判も結構です。しかし、不十分ながら頑張っているものに対して励ましを与えてください。皆さん方が何も見てくれないと言って医師会の活動や夜間診療、検死医など負担の多い仕事から遠ざかる医師会員もいます。あなた方の求めることが見えていないからです。あなた方のために働いているという実感が得られないからです。いくら努力しても医師に対する評価は同じだという冷めた観点に陥りがちになるのです。
 自分の診療所での診療だけで手いっぱいという先生でも、市や町の予防接種事業や医療に関する委員会、介護保険の審査委員や校医などの仕事に自分の時間を削って従事しています。それがやらなくてはならない仕事だと納得しているからです。
 しかし、それだけでは社会の要望にこたえられないので、医師会員にもう少し負担をしてくれとお願いしているのが実情です。みなさんの声援があればもっと医師会員も力が出るかもしれません。医師会の仕事にご理解をください。もっとわれわれに声をかけてください。
塩谷郡市医師会は記名での投書に対して誠実にお応えしたいと思います。どんなことでも結構です。批判や提言、お褒めの言葉も待っています。
2012年06月22日 (FRI)

塩谷郡市医師会長就任にあたって    2010年05月17日 (MON)