閑話休題 日本の保健医療システムは総合評価で世界一

 ここ暫くマスコミは、医療ミス、ニアミス以外の話をしていませんので、当欄に書く話題が乏しく、少々退屈しています。 それ以外の話としては、聖マリの麻酔科医連続死亡事件が出ていましたが、医師の皆さんは多分法医学で習って御存知の様に、ペンタゾシン中毒の大半が医師や看護婦であることを考えれば、聖マリ事件で使われた薬が何であるかは不明ですが、医療従事者が陥り易い罠にひっかかっただけの事で、私は、そんな類のものに引っかかる様なゴミが消えてくれてよかった、と、思っています。

 以前に書いた通り、私は医療ミスの話には余り触れません。 医療ミスの報道に絡めて、変な精神論だの隠ぺい体質だののトンチンカンな話が出た場合は反論しましたが、この報道で大切なのはミスの内容と一次的な原因と、可能ならその一次的原因を除く為の方策や提言です。 この点からすれば、最近の報道は、結局人手や資材(バーコードシステム等)の不足や欠如の話になってきています。 これは良い方向です。 どんどん、この様な医療ミスの報道をして欲しいものです。 「患者さんが医療不信に陥る」のを心配する向きもありますが、我々医師は神でも詐欺師でもありません、ここの所を患者さんが理解してくれた方が、我々医師にとっても仕事がやりやすくなるものです。

 人手や資材不足の話は、やがては人員増や資材開発供給の要求となり、医療費増の話と結び付きます。 また、「無駄な医療」の削減話とも結び付いていくでしょうし、患者さん達の身勝手な要求の抑制話も出て来るでしょう。 どこらに費用対効果の合意点を定めるか、官僚的に言えば「国民的合意が待たれる」という所でしょうか。

 話は変わりますが、8月22日、読売新聞は<世界の社会保障 保健医療の効率性 仏「世界一」>という記事を出しました。 これはWHO(世界保健機構)が、<健康で何歳まで長生き出来るか、医療への満足度、病院選択の自由、保険料負担の度合などを指標に191か国を比較したもので、こうしたランク付けは初めてだ。>そうです。

 見出しは上記の通りでしたが、記事の内容を良く見ると、仏は効率で世界一ですが総合で6位、日本は効率で10位でしたが、総合で1位でした。 しかも記事には、仏の問題点として、98年の時点で既に、総医療費が国民総生産(GDP)に占める割合が日本を大きく上回って世界4位であり、日本同様、医療費の伸びを抑えれそうにない事を挙げていました。 つまり、仏も将来的には効率性が低下してくると言うことです。 効率で日本より良いのは、順に仏、イタリア、サンマリノ、アンドラ、マルタ、シンガポール、スペイン、オマーン、オーストリアとなっています。

 さて、前回マスコミウオッチで話題としたのアメリカでの医療はどうかといえば、総合で15位、効率で37位、日本より受診抑制が徹底しているイギリスは総合で9位、効率で18位でしたし、ドイツはどちらも10位以内に入っていません。

 全国民の皆さん、色々、御不満があるのは承知しておりますが、世界的に見れば我が日本の保健制度、医療制度は、世界一なのですよ。(MAX)