介護保険料は高すぎるか?

 10月6日より読売新聞では<介護保険 半年のカルテ>と題して、介護保険の現時点での評価を始めました。 他のマスコミでも、同様の特集なり記事なりを出しています。

 読売の6日の記事は、1号保険料(65才以上の被保険者が支払う保険料)が「高い」等という老人からの苦情が自治体の介護保険担当者に来ているとの話に始まり、自治体レベルでの保険料減免話につなぎ、減免の基準となるべき資産の評価が難しいとしています。 資産額は、1世帯の世帯主の年齢別でみると、70才以上で平均9260万円、ちなみに40才台では4582万円です。 この記事の中で、当然の事ながら、資産を担保とした貸付け(モーゲージリバーサル等の事)の発展が必要という見解も載っています。

 まあ、妥当な話であろうと思います。 ただ、いやらしいのは、記事の始めの部分で<「40年間、汗水たらしてきて、戦後の高度成長を支えて、一生(←記事のままです。一所が正しいのは判っています)懸命働いてきた結果がおまえらこれか」>という馬鹿者の自治体への攻撃型の苦情で始まっていることです。 マスコミはこういった理不尽な感情表現に弱いですね。

 この発言をする資格がある人がいるとすれば、それは、本当に頑張ったけれども結局は資産が全く無く、結果として生活保護に陥ってしまった人でしょう。 こんな人が実際に存在しますか? 高度成長を支えたというならば、それなりに余録にあずかったはずでしょう? そして、戦争責任に目をつむって、自己の生活向上のみを追求し、うまい汁を吸い、そこそこの資産を形成した以上は、この手の感情表現はすべきではないし、マスコミもこの様な低俗な発言を取り上げるべきではないと思いますが。

 ところで、生活保護と言えば、生活保護者からも介護保険料は徴収します。 但し、その同額を生活保護の給付に上乗せして給付し、生活保護者は上乗せされた分の金を市町村の窓口で納める仕組み、つまり、実態上は生活費は全く変わらない事になっています。 この仕組みは、生活保護者が「支払う」という行動を取り上げない、つまり、後ろめたいという感情を起こしにくくするための工夫です。

 ところが、以前、自民党の亀井靜香という愚かな代議士が、フジテレビの報道2001で、生活保護者からも保険料を取るという、とんでもない制度であるとの内容の発言をしています。 このアホは、給付が同額分増額されるのを知らなかったようです。 知っていての発言なら、大嘘付きと言うことになります。 まあ、どちらにせよ、東大法学部出の頭は、この程度のものなのですが。

 さて、たまには少しSFめいた話をしたいと思います。 資産担保の貸付の話ですが、これが今より発展して制度として順調に回ったとしましょう。 ところで、資産の価値はどうなっていくでしょう?

 あと20年後、現在の子供達が結婚して世帯を持つ様になります。 しかし、現在、1組の夫婦で子供は平均1.5人未満です。 この子達の結婚ですから、親の家は2軒ですが、子が親の資産(家、土地)を相続するにしても1.5軒あれば十分です。 ということは、資産の1/4は不要になると言うことです。 不要になったものは売りに出ます。 売り物が多ければ値段は下がります、つまり資産価値が減って行きます。 その減り方は等比級数的になる可能性があります。

 また、産業に使われる土地にしても、工業は安い労働力を求めて国外脱出している現状ですし、農業用地は法的に隔離されていて動かず、しかも農業自体に国際競争力がないため、農家以外にとっては農地を買えないし買う理由も無い、従って価挌は下がる、「IT革命」とやらの進行によって、第3次産業では大きな土地が必要なのは倉庫用地のみ、店舗は在庫削減で売り場と駐車場以外はほぼ不要、本社や支社等の機能の大半はサイバー空間にあればよい、従って、従業員は本社のある大都市に住む必要はなく、サテライトのある市町村(地価が安い)に住む様になる、結局、全ての土地の資産価値が減少する事になります。

 さて、この時点でモーゲージリバーサルが成立するでしょうか。 価格が減ることに加えて、いくら価格が安くても需要が無くては売れません。 付いている価格は、「もし売買するならこの位」というだけの話で、売れる可能性が少なければ担保と認められる事はありません。 当然、実質の価格は、固定資産税を取られるだけマイナスです。 

 老人の資産が9260万と言っても、土地以外の資産は2500万しか無いのです。 この資産だと、100%で現金化出来ても月30万円の生活費で7年しか持ちません。 勿論、多少の働きと年金で、平均の年収は70才以上の1世帯当り470万位ありますから、何とかなっているのが現状なのですが、老夫婦のどちらかが寝た切りになった時点で土地が売れなければ、いずれは名目上の資産(土地)を抱えたまま破産します。 土地は、将来的には資産価値が無いのです。

 対策は、考え方を変える事です。 将来的には土地は財産ではありませんし、なり得ません。 現時点で子供に財産(土地)を残してやりたい、先祖代々の土地をそのまま残してやりたい等というつまらない妄執を捨てて、まだ土地神話が残っている今の内に流動資産化出来るものはしてしまう事です。 流動化した資産で、自身の老後を豊かに過ごすべきなのです。 こうして流動化した資産を計算の基礎に使って、不足分を他の世代から援助するという形にしないと、福祉がゴネ得を許す変な制度からいつまでたっても脱却出来ず、うさん臭い目で見続けられる事になります。

 子の世代からすれば、土地を相続することは、土地自体が無価値であるに加えて、その土地に縛り付けられる事を意味します。 土地に縛り付けられ、その地域の因習に染まり自己の発展の自由を捨て欝病や神経症を発症する、こんな事は止めにすべきです。 生物としての人類の発展は、移動と混血で達成されてきたものです。 これに逆らう文化や法や制度や習俗は、人類にとっては犯罪行為なのです。

 根本対策は、考え方を変える事です。 そのためには、きつい言い方ですが、或程度の不平不満が出る位の方が良いのです。 不平不満の解消の方向を、既成の宗教や道徳が作った甘やかしではなく、人類本来の活動パターンに沿った形に誘導する方向に定めれば良いだけの事です。 セーフティネットという意味では、既に資産も現金収入もない人に対しては生活保護があります。 生活保護が恥だの他人に迷惑をかけるだのという考えは、生活保護者に対する差別以外の何物でもありません。 高々、月数千円の保険料の支払が嫌だというのは、我が侭以外の何物でも無いと私は確信しています。 (MAX)