介護保険の2次判定に基準はないのか

 毎日新聞2001年3月8日号朝刊の「生活いきいき家庭」欄に「定点観測・介護保険」という記事があります。署名記事です。

 上田市議の義父が要介護度5から3へ下がったことで、長野県介護保険審査会へ審査請求したが却下された、ということです。

 脳梗塞になり7年前から痴呆の症状が出現したが、身体に重い障害がない。排泄は自分で出来るがトイレの場所がわからない。
 認定のために訪れた調査員も1回目は何度も自宅に来て養父の症状を良く知る人だったが、2回目はなじみのない広域連合の調査員だった。
 市議の義父は要介護度5でも自己負担の問題もあり、現実には3しか利用していない。
 しかし、制度の欠陥を問うために異議を申し立てた。
という記事の内容です。

 この市議の異議申し立てが却下されたのですが、当然のことだと思います。
 1回目の調査員は、その家を過去に何度も訪れているということは、知り合いだったということでしょう。
 2回目はしらない人が調査員だったわけですから、このときのほうが、より客観的だったと思います。
 しかし、痴呆の場合は、最初はわからない場合もあるわけで、そこは、家族が調査員に的確に症状を話さなくてはなりません。
そして、医師の意見書も大切になってきます。
そこで、きちんと痴呆の状態が書かれていれば、それで介護度の判定が的確に出来るからです。
市議は、自分の立場を利用して、介護度が下がったことに理不尽な異議を申し立てた、と私は思いますが、実際はどうなんでしょうか。

 また、この記事を書いた記者は、1次判定はしっかりした根拠があるのに、2次判定には根拠がないといっています。
「2次判定で何を根拠にどれだけ要介護度を変更するかの判断材料は、数値のような具体的基準はない」
と書いています。
これは、あきらかな間違いです。

1次判定が間違いが多いので、(3割はおかしい=ちなみに上田市では1次判定の3割が変更されているということで、その意味で正しい認定が行われていると思われます)旧厚生省も、2次判定に際しては、「60の状態像のどのパターンに近いか」で、2次判定をしてほしい、と言っています。
ですから、基準はあるんです。
60の状態像が、もっと多くなれば、もっとばらつきのない介護認定が出来ると思います。

さらに、この記事の例のような痴呆の場合は「認知活動尺度(CPS)」を用いると比較的ばらつきのない認定ができます。
・短期記憶に問題があるかどうか。(01)
・日常の意思決定を行うための認知能力がどの程度か。(012)
・自分を理解させることができる能力はどの程度か。(0123)
・食事の事故動作はどの程度か(01234)
これらは、主治医の意見書がきちんと書かれていれば、わかります。
そこで、CPSが0から6までにクラスわけが出来ますので、それを基準にすればよいわけです。

 この記事の内容は、途中で、論旨がおかしくなっているところがあり、十分に内容を理解しないまま書いたと思われます。
 介護保険認定作業が始まって、もう1年半になります。未だに、新聞に記事を書こうという記者が、この体たらくではね。もっとちゃんと勉強してから、取材して記事を書くべきです。
        (藪野)