医師国保は優遇されているのか

11月14日下野新聞の4面に以下の記事があります。
見出しは<医療費負担医師ら2割><「優遇しすぎ」批判強まる>。
「医師国保」は政府から補助金を受けているのに自己負担が2割なのはおかしいという内容になっています。

記事では
<国保組合への補助の在り方は以前から問題視されており>医師国保が自己負担を3割にしないのであれば<医療制度への不信を払しょくするためにも>補助金制度を見直せと言っていますが、この記事は共同通信からの配信のようで、保険制度を全然知らないようです。

医療保険制度をここで説明するには、あまりにも煩雑ですので、おおざっぱにわけると社会保険と国民健康保険なのですが、中身は複雑です。

このような制度を<ことし三月、政府は医療制度改革の柱の一つとして保険運営者の統合・再編を打ち出した>と記事にあります。

医師会は、この制度一本化に反対はしていないのです。大賛成なのです。
昔から、医師会は一本化を主張してきたのです。

国民皆保険が完成した昭和36年から間もない昭和38年に日本医師会・歯科医師会・薬剤師会が主催して行った「国保強化医療経済体系確立推進全国大会」で
「各種医療保険の国保への統合」
を大会スローガンの一つに挙げています。

この統合に強力に反対しつづけているのが健保連です。
つまり、新聞記者諸君が加入している社会保険側が反対しているのです。
保険の統合を主張するなら、まず「隗より始めよ」で、社保の加入者自身から声をあげるべきでしょう。

さて、医師国保がなぜ、自己負担が少ないのか?
それは、受診率が低いからです。
インターネットで調べると判ると思いますが、国保加入者の受診率は、年間800%から1000%です。
厚労省のHPで検索すると平成14年度は入院外で826.6%の受診率です。
つまり、国民一人当たり、年間8回医療機関を受診するというわけです。

医師国保はどうか?
手元に平成10年度の統計があるので、それによると、
453.3%(第一種組合員つまり開業医自身)、484.5%(家族・従業員)です。
つまり、医師国保加入者は、年間4〜5回しか医療機関を受診しないのです。

何故でしょうか?
医療従事者は健康なのか?

そうではないようです。歯科の受診率は、一般的に110%内外ですが、栃木県医師国保は145%です。
医療従事者は歯だけ弱いわけなのではありません。

それは、医師国保には次のような決まりがあるからです。
「自己、自家診療は、請求を自粛し、止むを得ぬ場合は、郡市医師会長の意見によること」

平たく言うと、自分自身や、家族・従業員を診療し、治療しても医師国保は支払いません、ということです。

その結果、医師国保加入者は、領域以外の歯科へは受診するけれども、
それ以外は自分で治療し、従業員も自分の医療機関で治療し、
その医療費は保険請求せず、自分で負担しているのです。
自分の力の及ばない場合や、自分ではできない処置のときだけ他の医療機関を受診するので、受診率が低いのです。

医師国保が自己負担が低くても成り立っているのは、この、他の医療機関への受診率の低さ、によるからです。

自己負担を3割にしなさい、というのなら、
自己、自家診療分も保険請求を認めて支払わなくては不公平でしょう。

インフルエンザが流行すると、そのときは保険の支払いが増加します。
しかし、医師国保は増加しない、と栃木県医師国保の係りの方がお話ししてました。
もう、なぜだかおわかりですね。
もちろん、予防注射もするからでしょうが、罹患しても自分で治療してしまうからなのです。

このような受診率だけでも調査して、記事を配信するべきなのですが、共同通信はどうしちゃったんでしょうかね。

また、下野新聞もお粗末でした。
記事のお終いの方の22行、同じ文章の繰り返しですよ。
読まないで配信された通り記事にしちゃったんでしょう。
下野新聞社には親戚始めとても良い方が大勢おられるので、批判したくないのですが、
今回はあえて、マスコミウオッチに掲載いたしました。
  (薮野)