朝日新聞「混合診療賛否入り乱れ」について

04年11月28日の朝日新聞朝刊2面に混合診療が取り上げられています。
「日本医師会は反対の声を上げるが、大学病院は規制緩和を訴える」という趣旨です。
混合診療を「保険証を使う診療と、美容整形など保険の利かなくて全額負担する診療を組み合わせたもの」と説明しています。
美容整形と保険の利く診療を組み合わせるのが混合診療ではありません。

政府や総合規制改革会議が言っている混合診療とは、
風邪などの軽い病気は保険から外し、
また、今まで認められてきている保険診療の枠を狭めて、
その枠から外れた部分を患者の自己負担とすることです。

確かに、「あと少しで認可される薬剤を患者自己負担で使用し、それ以外は保険診療を併用してもいいですよ」 というのは、
今まで保険診療分まで自己負担だった患者にとっては朗報かもしれません。
しかし、そういう患者さんは全国に何人いるのでしょうか。
そういう例を持ち出して、例えば風邪は保険から外す、ということになると、どうなるのでしょうか。

ひとつ具体的な例をあげましょう。
熱があり、体がだるいと訴える患者さんが診療を受けにきました。
さて、医者はどうやって風邪と診断するのでしょうか。

「熱があり体がだるい」
問診で、数週間前にブタの肝臓を生焼けで食べたということがわかったとします。
体を診察してもたいした変化はありません。
まず尿の検査をします。熱の出る疾患はいろいろありますから、検査はせざるを得ません。
ウロビリノーゲンが多かったとします。
となると、血液で肝臓の検査もするでしょう。
なにしろブタの半生を食べたようですので、E型肝炎も心配ですからね。
とりあえず対症療法を行いつつ、検査結果が出る翌日か翌々日に再診していただきます。
検査結果は正常でした。
患者さんも楽になったといいます。
結局、医者は「風邪」と診断しました。

すると、診察料金(初診料と再診料)は保険診療で3割負担、残りは全額患者負担となる可能性があります。
あるいは、風邪は保険診療してはだめ、という制度になると、診察料も検査料金も薬剤も全部自己負担となるのか。
初診のときから窓口負担は決められないということになります。
そうです、病名が決まるまでね。

こういうことも書かなくてはいけないと思います。
さらに、総合規制改革会議のいう混合診療は、
株式会社を参入させ、医療を金儲けの道具にしようという構図のなかの問題である、
という視点も欠落しています。

また、図が挿入されていて、
解禁になるとがん患者の自己負担が55万7860円軽減になるというわかりやすい図になっています。
この図を見ると、読者は混合診療に賛成するでしょうね。
また、図は、混合診療の自己負担分をことさら小さく見せようとする工夫がなされています。

この記事は署名記事ではないので誰が書いたかわかりませんが、ぜひ、ご一読をお勧めします。
朝日新聞やテレビ朝日に広告を出している企業にスタンスを置いた記事であることが良くわかります。
          (薮野)