開業医「儲けすぎ」検証 AERAの意図的宣伝

AERA08年2月25日号のねじまげ見出し

AERAを購読する人は何人いるのか知らないが、AERAの新聞広告で見出しだけを見る人の方がはるかに多いに違いない。
2008年2月18日の朝日新聞34面に、いつものように大々的にAERAの広告が掲載されている。(AERAも朝日新聞社だから当たり前か)
記事の見出しがセンセーショナルに並んでいる。
センセーショナルでなくては購買欲が沸かないから、そうせざるを得ないのだろう。
それは理解するとして、この見出しはまずすぎる。
読者に誤解を与えるどころか、誤解させようとした悪意ある見出しである。
今は亡き『あるある大辞典』で外国の研究者が話したことをぜんぜん違う日本語でかぶせて放送したのと同じことだ。

広告の見出しは
 開業医「儲けすぎ」検証
 診療報酬の最大7割が領収書なしで経費になる優遇税制/
 収入は勤務医の1.8倍/日本医師連盟の政治献金先リスト
となっている。

ところで、医師優遇税制とはどういうものか、当の開業医でも知らない人もいるというので、ざっと説明しておく。
まず、この税制は租税特別措置法の社会保険診療報酬の所得計算の特例というものである。

保険収入が2500万円以下の診療所の場合、72%を必要経費とし、
以下段階的に必要経費の%は下がり
4000万円から5000万円以下の場合は57%となる。

この場合、当然のことながら収入=所得(利益)ということではない。
収入から当然、医薬品、給与、医療機器、設備や建物の減価償却などが経費として支出されて、残りが所得になる。
その必要経費分を、どんぶり勘定で、これぐらい、としたのがこの税制である。

一般の開業医がこの税制について抱いている幻想がどんなものか、非常にわかりやすく記載されているホームページを見つけたので紹介しておく。
<中之島のBOW>である。
http://www.asahi-net.or.jp/~mf4n-nmr/index.html

<私どものような開業医は医療サービスを業とする零細企業である。企業であるからには経理・経営を無視することはできない。しかし、私ども医師のだれもが、大学時代はもちろんのこと、勤務医時代にも、経理・経営に関するトレーニングを受けたことは皆目なかった。医師は医学のこと、医療のことを考えておれば良いとされ、世間も暗黙のうちにそれを了解していたようだった。 
73年に開業をしたが、診療の必要経費を72%と計算しても良いという特別措置法が存在していて、記帳をしなくても税金の計算を簡単に行うことができるので、経理や経営について勉強することもなかった。 
しかし、この特別措置法は「医師優遇税制」だとする世間の非難のボルテージが高くなるにつれ、本当にこの措置法で医師は優遇されているのかについて疑問が生じて来た。 
そこで、開業10年目の83年に、1年間の薬問屋の支払いなどの経費を計算してみた。これは、ほとんどの請求書や領収書を残していたので実行可能だった。また、水揚げに相当する総収入は、99%が健康保険からの振込なので、経費割合の計算も簡単であった。 
その結果は、予想通り70%近い費用となった。そこで、大阪府医師会に関与している会計事務所に、これを見てもらったところ、抜けている費用がもっとあると指摘され、即座に青色申告を勧められた。その指摘を取り入れ、翌84年から、世間で非難される「医師優遇税制」と決別し、青色申告を採用したが、その結果は1年後に大幅な節税になって戻ってきた。白色から青色に変更して正解だったのである。 
悪名高い特別措置法が「医師優遇税制」では決してないことを、その時にはっきり知った。大部分の医師たちは、記帳と計算に慣れていないので、その手間の要らないこの措置法を使って丼勘定をしてきたというのが真相であろう。>

AERAの『収入』が勤務医の1.8倍という場合は、たぶん『所得』のことだろうと思うが、それほど高額の所得の場合は、医師優遇税制の対象にはなっていないはずである。
いや、なれない。収入が5000万円(所得ではない)以上の場合は対象ではないからだ。

医薬品の卸からの仕入値段は、薬価ぎりぎりである。
薬価の90%で仕入れできれば良いほうなのだ。それに誰に負担してもらえるわけでもない消費税がつくのである。
医薬品に関しては、医師優遇税を適応している医療機関にとって全く優遇されていないのだが、医師自身もあまり気づいていない。
第一、この特別措置法の税制を続けていると、従業員の待遇改善や、医療機器の買い替えなどを行いがたくなる。
経費を増やすことができなくなり、医療機関の進歩は望めなくなる。

ほとんどの診療所は検査を外部検査機関に依頼しているはずであるが、その検査費用も、社会保険の点数表ぎりぎりの値段で依頼しているのが実情だろう。
つまり、検査をすればするほど、特別措置法は優遇税制ではなくなっていくことになる。

AERAは意図したのかそうでないのか知らないが
 診療報酬の最大7割が領収書なしで経費になる優遇税制/
 収入は勤務医の1.8倍/
と並べることによって
開業医「儲けすぎ」、勤務医の1.8倍も収入がありながら領収書もなしで経費が7割も認められている!
ずるいぞ!
それは、医師連盟がどこかに献金しているからだ!
と、見る人の意識を誘導していることになる。

朝日新聞は、もう少し医療制度について、あるいは診療所について勉強していたはずなのに、このところの記事はひどすぎる。

再診料の問題も、朝日だけは
「勤務医の再診料は570円、開業医の再診料は720円」
と書いているのだ。
これは、
「病院の再診料は570円、診療所の場合は720円」
とするのが正しい。ほかの報道機関はそのように報道している。
診療所に勤務する勤務医が診療すると570円ではないのだから、朝日の新聞記事は間違いである。

ところで、朝日新聞は、今回の改訂で、診療所の再診料が下げられなかったのが不満のようである。
しかし、開業医が診ることの多い糖尿病や高血圧症で、一度シュミレーションしてみるといい。
再診料が何十円か下がらなかったかわりに、検査判断料が100円下がったり、
生活習慣病管理料の場合は2800円も下がるということがわかるに違いない。

ま、朝日の医療担当の記者には、色眼鏡をはずして、世間一般を広く眺めることをお勧めする。

薮野