塩谷郡市医師会学術講演会 報告
日時: 平成18年6月22日 19時〜
場所: さくら市氏家保健センター
テーマ: 「肝細胞癌の特性と診療の実際 −肝癌撲滅に向けて−」
司会: 山田内科胃腸科クリニック 院長 山田 聡 先生
自治医科大学内視鏡部・消化器内科 助教授 井戸健一先生
演題・講師: @「肝癌の局所治療」
 自治医科大学消化器内科講師 磯田憲夫先生
A「肝癌の外科切除と肝移植」
 自治医科大学中央手術部・外科教授 安田是和先生
B「専門医に紹介すべき肝癌予備軍」
 獨協医科大学消化器内科教授 菅谷 仁先生
内容: C型肝炎の国内感染者は150万人を越え、慢性肝炎から肝硬変、肝癌に進行する症例が少なくない。この日、薬害C型肝炎集団訴訟で国の過失を認める判決が出された。国民の関心が高まるなか、HCV抗体陽性者にはより慎重な対応が求められる。

@肝癌の局所治療はエタノール注入療法、マイクロ波凝固療法、ラジオ波焼灼療法がある。一般的な適応は腫瘍最大径3cm以内、病変数3個以下、血小板数4万/mm3以上である。それぞれの治療法や使用器具の説明、長所短所、部位別の工夫などを解説した。自治医大では患者さんの苦痛や治療の確実性、周囲臓器の損傷などを考慮して、全身麻酔下での腹腔鏡的局所治療を行っている。次いで、実際の治療について画像と動画で供覧した。肝癌は肝内異所性再発が35%あり、局所療法、TAE(肝動脈塞栓療法)、外科切除などを組み合わせて治療する必要がある。治療にあたっては消化器外科、放射線科との連携が重要である。

A肝癌に対する外科的療法は根治性に優れ、血管や胆管近傍でも切除可能であるが、侵襲が大きく良好な肝予備力が要求される。外科的治療の適応は腫瘍の大きさが4cm以上、多発の場合は大きいものは肝切除し、小さいものは他の治療法を組み合わせる。肝切除を含め4年間で10回に及ぶ局所療法とTAEを行った症例を提示し経過を説明した。
また肝移植の現状について、小児に対する肝移植は生存率も高く有効な治療法であるが、成人肝癌に対する移植治療には問題点も多い。ドナーの肉体的負担、限られた人からの提供による適合性の問題、肝炎ウィルスのグラフト感染などがあげられる。肝癌の各種治療法の進歩からその予後は移植と遜色がなくなってきており、肝移植は選択肢の1つと考えられる。

B肝癌はこの30年間増加しており、年間死亡者数は3万人を超えている。男性では肺癌、胃癌についで3位である。今後もC型肝炎からの発症が増加するとされており、漫然と治療を続け肝癌の診断が遅れた場合はその過失を問われる危険がある。慢性肝障害患者に対してはHBs抗原、HCV抗体の検査を行い、陽性のときは超音波でのスクリーニング検査を行う。C型肝炎の場合はインターフェロン療法も検討すべきである。また超音波検査では描出が困難な部位があり、造影CT検査を併用すべきである。慢性肝炎では6ヶ月、肝硬変では3ヶ月ごとに超音波での経過観察が必要とされ、専門医との病診・診診連携が必要である。 

 講演の後、山田先生、井戸先生の司会進行により、肝癌治療においては著名な3氏に登壇いただきシンポジウム形式での討論が行われた。注意すべき点は肝障害を認めたときは速やかに抗体検査を行い、陽性の場合は定期的に超音波検査を行うこと。造影CT、インターフェロン療法について専門医に相談すること。PETでは肝癌は診断できないことなどです。約40名と多数のご参加をいただき、肝移植の功罪や海外での移植に対する受け入れ国の批判、各科の協力体勢など学会では聞けない貴重なお話もいただき多彩な勉強会となりました。

 

(文責:広報委員 阿久津博美)