医師会リレーコラム(下野新聞好評連載中) 2005年1月〜12月
12月27日 地域の将来 尾形クリニック院長、塩谷郡市医師会会長 尾形直三郎
12月20日 医学の進歩 岡医院院長 岡 一雄
12月13日 高齢者とリハビリ 尾形クリニック・リハビリテーション科 赤沼 栄
12月 6日 水虫 氏家皮フ科クリニック院長 宮崎達也
11月29日 在宅医療 尾形医院院長 尾形新一郎
11月22日 更年期の話 大草レディスクリニック院長 大草 尚
11月15日 成長期スポーツ障害 西川整形外科院長 西川侃介
11月 8日 白内障

たかはし眼科院長

高橋雄二
11月 1日 中高年者の運動 西内科医院院長 西健太郎
10月25日 混合診療 戸村医院院長 戸村光宏
10月18日 ある老人の死に思う 岡医院院長 岡 一雄
10月 4日 めまいと耳鳴り 村井医院院長 村井信之
 9月27日 医療保険と社会保障 尾形クリニック院長 尾形直三郎
 9月20日 認知症の介護  佐藤病院 佐藤勇人
9月13日 最新の情報発信 岡医院院長 岡 一雄
9月 6日 生活習慣病  光陽台診療所院長 阿久津
8月30日 昼間の小児科 菅又病院小児科 菅又久美子
8月23日 医療保険 尾形クリニック院長 尾形直三郎
8月16日 乳幼児健診 高瀬小児医院院長 仲澤博子
8月 9日 オーダーメード医療 耳鼻咽喉科・気管食道科越井クリニック院長 越井健司
8月 2日 鬼手仏心 大和田内科院長 大和田信雄
7月26日 女性専門外来  塩谷総合病院 服部 緑
7月19日 障害 植木医院院長 植木雅人 
7月12日 目の成人病 加藤眼科医院院長 加藤晴夫
7月 5日 胃瘻 高根沢中央病院 青木 洋
6月28日 医療保険  尾形クリニック院長 尾形直三郎
6月21日 国民皆保険前の時代 桧山医院院長 桧山猛郎
6月14日 検診と人間ドック 塩谷総合病院副院長 沼尾利郎
6月 7日 周産期医療の危機 きうち産婦人科医院院長 木内敦夫
5月31日 スポーツ医の役割 村井胃腸科外科クリニック院長 村井成之 
5月24日 医療の安全性確保 尾形クリニック・副院長 宮下 厚
5月17日 五月病・うつ病 氏家病院副院長 松村 茂
5月10日 リビングウィル 中尾内科医院院長 中尾政利
5月 3日 レセプト 戸村医院院長 戸村光宏
4月26日 増える異常死 根本医院院長 根本鞍夫
4月19日 学校医 かるべ皮膚科小児科医院院長 軽部敏昭
4月12日 救急医療 黒須病院院長 金澤暁太郎
4月 5日 たばこ 森島医院院長 森島 真
3月29日 十代の性 きうち産婦人科医院院長 木内敦夫
3月22日 産業医 阿久津医院院長 阿久津博美
3月15日 医療ボランティア 小島医院院長 小島 崇
3月 8日 介護保険 小林医院院長 小林正樹
3月 1日 予防接種 かるべ皮膚科小児科医院院長 軽部敏昭
2月22日 花粉症 中川耳鼻咽喉科医院院長 中川 渉
2月15日 インフォームドコンセント 山田内科胃腸科クリニック院長 山田 聰
2月 8日 風邪 岡医院院長 岡 一雄
2月 1日 患者の心理 戸村医院院長 戸村光宏
1月25日 病院側から見た医療連携 塩谷総合病院院長 奥山和明
1月18日 診療所から見た医療連携 池田クリニック院長 池田 斉
1月11日 身近な町医者 岡医院院長 岡 一雄 
身近な町医者
 「先生はわたしのかかりつけ医ですから、最期まで先生にお世話になりたいと思います」
診療所に月に一度やってくる老婦人は、診察の終わりに念を押すようにこう付け加えます。
地域の町医者として「かかりつけ医」の責任を再認識させてくれる重い一言です。なぜなら医者はこの一言によって今後の彼女の体や心だけでなく、人生の終焉(しゅうえん)にまでも大きくかかわることになるからです。
大学病院の勤務医だったころの私にとって「外来の患者さん」は自分の患者さんというよりも「大学病院を受診する患者さん」という感覚の方が強く、「入院で受け持った患者さん」だけがかろうじて自分の患者さんだと感じられました。
一方、受診する患者さん側も担当医がたびたび交代するため「◯◯先生に診てもらう」というより「大学病院で診てもらう」という意識が強いのも事実です。
もちろん患者さんから「最期までお世話になります」なんて言われたことなどありませんでした。
小さな子供を育てている若い夫婦の「かかりつけ医」は子供の病気を治療するだけでなく時には子育ての相談も受けます。
生活習慣病で悩む壮年層にとって「かかりつけ医」は普段の健康管理を任せるだけでなく、仕事の上でのストレスや悩みを相談する相手でもあります。
そして、自分の人生の終わりを意識するようになった高齢者にとっては「かかりつけ医」とは最後まで面倒をみてくれる医者のことなのです。
それぞれ患者さんと「かかりつけ医」のかかわり方は違っても、お互いに信頼する気持ちがあってこそ成り立つ関係です。
一昨年、塩谷郡市医師会で域内の住民三千人に地域医療に関するアンケートを実施しました。アンケートに答えてくれた方の約六割が「かかりつけ医」がいると答えました。
「かかりつけ医」とはもともとかかり慣れている医者という意味ですが、実際はそれだけでは言い尽せないさまざまな役柄を持っているのではないかと思います。

(岡医院院長・岡 一雄)

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診療所から見た医療連携
一般的な診療所は、設備は限られますが幅広い総合診療を担っています。このような診療所には、地域の人々が集団健診の結果を持って来ます。検査の数値や項目がどの程度悪いのか、今後どうしたら良いのかなどの相談です。
 たいていは、高血圧症や高脂血症、軽度の糖尿病などの生活習慣病ですので、食事療法や運動療法の指導や経過観察を行います。しかし、なかには特別な設備のいる検査を必要とする場合もあります。もちろん、診療所によってはできる所もありますが、できない場合は、総合病院や専門的な医療機関に紹介することになります。
 では、あなたの体調に異変が起こった場合はどうでしょうか。緊急な事態でなければ、まず診療所の「かかりつけ医」を受診するのがよいと思います。診察の結果、もし精密検査や専門的な治療が必要な場合は、「かかりつけ医」なら専門的治療や入院に対応できる適切な医療機関を紹介してくれるでしょう。
 このように集団検診で異常が出た場合でも、病気になった時でも、医療機関が相互に協力して医療を提供し健康を維持増進していく仕組みを「医療連携」といいます。
 「かかりつけ医」から専門病院(専門医)への患者紹介は「診療情報提供書」が必要です。この書類には紹介目的、病状、今までの治療経過、検査内容、そして「かかりつけ医」の考えなどが記載されています。これにより無駄な検査を省く事が出来るために診断に遠回りをせずに診断がすみます。
 ところで「かかりつけ医」は患者さんをどのような病院に紹介するのでしょうか。以前は医師の出身大学の系列病院や、かつて勤務していた病院など個人的につながりのある医療機関に紹介する傾向がありました。しかし、最近では「医療連携」が進んでいるため、診療所は中核病院などの情報、例えば各診療科の専門領域や担当医師などを知ることができます。そのため、診療所から専門医への紹介が以前よりしやすくなりました。
 しかし、この連携は始まったばかりであり、まだまだ一般には知られていないようです。患者さんにより良い医療を提供するための「医療連携」という仕組みは読者の皆様にも広くご理解いただきたいものだと思います。

(池田クリニック院長・池田 斉)

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病院側から見た医療連携
かかりつけの患者さんの具合が悪くなって入院が必要になった時、入院先の病院を見つけるのは開業医さんにとっては大変なことだそうです。
まず、これはと思う病院に電話をかけ、治療に最も適した専門の診療科に連絡をとります。その診療科の外来の看護師さんに説明し、その後、医師に代わってもらい同じ説明を繰り返します。するとたいがい「ベッドの空きを調べてから連絡します」と言われ待つこと約十分間、「残念ながら満床です」との返事。気を取り直して別の中核病院に電話し、再び同じ説明を繰り返します。
そして、ようやく患者さんが入院できて数日後、家族の方の話を聞いて初めて、入院後の患者さんの状態や治療のことが分かるなんてことが昔は当たり前でした。極端な場合には、かかりつけ医が知らないうちに紹介した病院から別の病院に転院になっていたなんて話もあります。
しかしながら、以前に比べ「医療連携」が進んできた現在は、少し様相が違ってきています。
最近、どの中核病院でも「医療連携室」が設置され、患者さんの入院の紹介などが一つの窓口で行えるようになってきています。
かかりつけ医と中核病院の勤務医との交流と勉強を兼ねた「地域医療連携交流会」や「病診連携懇話会」などが開かれるようになり、かかりつけ医と病院の勤務医との間の垣根も低くなったと思います。
さらに、塩谷郡市医師会は、国および県の医療連携のモデル地区に指定され、さまざまな医療連携の取り組みを行っています。
その取り組みの一つとして昨年九月、矢板市の塩谷総合病院に「連携くん」というインターネットを利用した医療連携システムが導入されました。
このシステムを用いることにより、病院とかかりつけ医は紹介患者さんのデータを共有することができるようになります。
現在は、紹介患者の入院日時、退院日時、どの診療科が治療に当たっているかなどのデータだけですが、今後入院後の検査や診療内容などの詳細情報も加えたいと考えています。もちろん、大切な患者情報が外部に漏れないようなセキュリティを採用しております。
これらの医療連携の取り組みにより、かかりつけ医と中核病院はお互いの長所をいかした協力体制を作り、地域医療に貢献していこうと考えています。

(塩谷総合病院院長・奥山和明)

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患者の心理
 私は、医者なのにどういうわけか病気がちです。
 かなり前、トイレの中でものすごいめまいに襲われたことがあります。かろうじて居間まで這っていき、どっと倒れこみました。全く動けず近所の医師に往診していただきました。注射をされましたが「そ、その注射は何でしょうか」とだけかろうじて問うことができました。でも吐きそうで何て答えていただいたのかよく覚えておりません。
 またかなり前、胃ファイバーをのんだことがあります。お医者さんは「今半分くらい終わりましたよ」「今、七割くらいです」などと、ファイバーを操作しながら途中経過を話して下さいました。こらえ性のない私でも「もう少しだな」と我慢できました。
でも九割と言われてからがずいぶん長く感じました。研修医に「ここが幽門で胃の出口です」なんて話している声も聞こえましたので、まんざら気のせいばかりではなかったかもしれません。「早く抜いてくれ」と思いましたが、終わった後「大丈夫、胃炎だけです」と説明されたとたん、数週間続いた胃の不快感は一瞬にして消え去りました。現金なものです。
検査中に「ゲップはこらえて下さい」と何度も言われましたが、これは無理な注文だとわかりました。以来、私が行うときには患者さんに「なるべくゲップはこらえて下さい」と言っています。
 その後も蒲柳(ほりゅう)の質の私はたくさんの病気になりそのたびに患者さんのココロを味わいました。苦しかったり、不安だったり、痛かったり、注射や処置がどういう理由でされるのかよくわからなかったり、あとどのくらい我慢しなくてはならないのかなどなど、医学書だけでは実感できないことだと思いました。ということは、患者さんのココロは、医者にとって自分がかかったことのある病気以外はわからないのかもしれませんね。
 そこで、患者さんの出番です。自分の病状や困っていることをきちんと医者に伝えて下さい。そしてわかるまで説明を聞いて下さい。説明を受けて納得したと思っても、家に帰ると「どうも違うな」と思うこともあります。そしたら次の受診のときに確かめましょう。そうでないと、医者はうぬぼれ屋さんが多いので「患者さんは満足しているのだな」と考えます。いくら病弱な医者でも、あらゆる病気になるわけにはいきませんので、よくお話をして『患者のココロのわかるかかりつけ医』を育てて下さい。 

(戸村医院院長・戸村光宏)

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風邪
 六年前の冬、全国でインフルエンザが大流行し、多くのお年寄りが亡くなりました。私の近所でも家族全員がインフルエンザにかかり、その結果おじいさんが亡くなり、おばあさんも重症となりましたが、入院して何とか命を取りとめたことがありました。  
そのニ年後から市町村の公費負担でインフルエンザの予防接種が六十五才以上の高齢者に行われるようになり、最近はインフルエンザで亡くなる高齢者がずっと少なくなりました。
 この時期、よく患者さんから「私はインフルエンザじゃないでしょうか」と質問されます。今では数分でインフルエンザかどうか診断できるようになりましたが、それ以前は熱や関節痛などの症状や周囲の流行の状況から診断していました。実際には普通の風邪となかなか区別がつきにくいことも多くあります。 
むしろ、医者にとってはインフルエンザより「風邪」のほうが気を付けなくてはならない病気の一つです。
「咳(せき)が長く続いています」とか「微熱が続いています」あるいは「体のだるさがとれません」などの訴えがあれば、肺炎、結核、肺がんなどの重い病気の可能性も考えなくてはなりません。ごくまれですが白血病などの血液の病気で体の抵抗力が落ちて風邪が長引くこともあります。
 最近、混合診療の解禁をめぐって論争が起きています。普段われわれが病気のときに医療機関で受ける診察や検査、治療はすべて保険診療のため、窓口での自己負担は年齢などで異なりますが一割から三割となっています。
 もし、混合診療が本格的に導入されると、いずれ「風邪」のような軽い病気が保険診療からはずされて自費診療、つまり自己負担十割になる可能性があります。
そうなると、発熱や咳くらいで気軽に病院にかかれなくなります。「自己判断で風邪だと思っていたらどんどん具合が悪くなり、病院を受診したときにはもう手遅れだった」なんていうことになりかねない、国民の健康と言う点ではまさに冬の時代が来ることになります。
「風邪は万病のもと」という名言が示すように「風邪」だからといってゆめゆめ軽んじてはいけません。まだまだ寒い日が続くこの季節、くれぐれも「風邪」にはご注意ください。

(岡医院院長・岡 一雄)

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インフォームドコンセント
 先日、ある病院を紹介していたAさんがやってきました。「放射線と抗がん剤の治療で腫瘍(しゅよう)を小さくしてから手術を行う予定だったのが、遠隔リンパ腺転移のため根治術はできず、副作用に注意しながら抗がん剤治療を続けることになった」とのことでした。
しかし、Aさんは「あの先生を紹介してくれて本当によかった。一緒にがんと戦って一日でも一週間でも長く生きるように頑張る」と意気軒高に語っていました。担当医とじっくり語り合って病気を理解したうえで覚悟を固めたのです。
 最近、医療の現場で「インフォームドコンセント」という言葉が盛んに使われています。日本語では「説明と同意」とされていますが、それだけの意味でありません。
人には誰でも自分のライフスタイルを決める権利(自己決定権)があります。車で、B地点からC地点に行くとき、自分の経験や地図の情報や人からのアドバイスなどを基に最短距離か、最短時間か、高速を使わないで安く行けるか、などを検討して道を決めます。
しかし、その選択が一番良かったかは着いてみて初めて分かります。いや、本当に最高の選択だったのかは、誰にも分からないかも知れません。それでも、自分で決定したという満足感は残ります。
 医療の世界でも、あらかじめ満点の治療法は分かりません。結果として良くなれば正解、悪くなれば不正解という評価が下されます。難しい病気の場合、医師も患者も最上の成果を望んで最悪の結果になることもあります。
そこでこの病気を放置するとどんな危険があるのか。どのような治療法があるのか。その治療を受ける利益と不利益は何か。治療の成功率はどのくらいか。費用はどのくらい掛かるのかなど医師と患者が多くの情報を共有して治療法を検討し、一緒に病気に立ち向かおうという傾向になってきています。多くの情報を有する医師が患者にさまざまな情報を提供し、患者の自己決定権を重視する方法がインフォームドコンセントなのです。
 とはいえ、患者にすべての情報を単に提供すればすむというものではありません。医師としても自分の知識、経験、技術を基に治療法を提案し、さらに患者が別の医療機関や医師に診断や治療について意見を聴くセカンドオピニオンなども積極的に活用し、最高の結果を追求するシステムが理想の医療と言えるでしょう。
インフォームドコンセントは、医師と患者との最上の信頼関係を築く方法だと思います。

(山田内科胃腸科クリニック院長・山田 聰)

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花粉症
 「また私の大嫌いな季節がやってきました」と言いながら診療所を訪れる患者さんがいます。スギ花粉症の季節です。その患者さんは「私は春の野に出て花をめでることもできません。ただ家の中に閉じこもって鼻をかむだけです」と嘆きます。
 花粉症の症状を決める一番大きな要素は飛んでくる花粉の数です。飛んでくる花粉が多い日、多い年は症状が自然に重くなります。今年は昨年の猛暑のせいもあって、史上最高の花粉飛散量ではないかと予想されています。
敏感な方はすでに感じていたと思いますが、実は昨年の十一月頃からスギ花粉は飛び始めていたのです。
 日本人の三〇パーセントがスギ花粉症と言われています。まさに国民病といわれるほど増加した原因にはいろいろなことが考えられています。大気汚染や不適切な杉林の管理、食物添加物の影響、回虫などヒトの寄生虫の減少などです。
おそらくそれらのいろいろな事が影響しあってアレルギー体質の人が増加したせいかもしれません。
そして、この時期になると実に様々な治療法がマスコミで紹介されます。しかし、まずはスギ花粉に触れない工夫が重要です。例えば外出時には必ずマスクをして、帰宅した時は頭や服に付いた花粉を払い落としたり、目の症状が強い人はメガネやゴーグルをかけたほうがいいでしょう。この時期は布団を外に干さないことも重要です。
これらの工夫だけでのりきれない人はのみ薬、点鼻薬、目薬など最も一般的な薬による治療が必要です。薬が効かず症状が強い場合はスギ花粉エキスを少しずつ体に注射する減感作療法やレーザーなど手術的な治療法を行うこともあります。インターネットや通販などで手に入る民間療法薬には時に有害なものも含まれており、大変危険なものもありますので注意してください。  
最後に付け加えると、毎日の生活の過ごし方や精神的・肉体的な体調の善しあしも症状の重さに影響します。睡眠不足やストレス、暴飲暴食などのないよう規則正しい生活を送り体調を整えて花粉症のシーズンを過ごしてください。
もし、花粉症で悩んでいるなら一度かかりつけのお医者さんに相談するのが安心です。最新の治療法のこと、民間療法のことなど何でも気軽にご相談ください。そのためにこそ「かかりつけ医」がいるのですから。

(中川耳鼻咽喉科医院院長・中川 渉) 

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予防接種
お母さんに手を引かれながら町の公民館へ。
そこで子ども達の泣き声や喧騒(けんそう)。そして消毒のにおい。予防接種という言葉からこんな光景を思い出される方は多いかも知れません。
これは、集団接種といって、対象者が決められた日時に決められた場所に集まって接種をする方法です。十年程前まではこれが主流でした。
現在は集団よりも個人個予防に重点が置かれるようになり、個人が町の医療機関で接種を行う個別接種に変わってきています。個人の健康状態が良好な時にかかりつけ医で接種できる点や、問診や説明にも十分な時間がとれるなどの改善が図られるようになりました。
 いろいろと利点の多い個別接種ですが、実は集団接種に比べて接種率が低下してしまうといわれています。
好きな時間や場所が選べるのになぜ、と思われるかもしれません。接種日時が指定され、連絡がきたら出かける集団接種と違い、個別接種では自己管理で接種スケジュールを決めなければいけません。
赤ちゃんのときは気にかけていた予防接種も成長するにつれ、うっかり忘れてしまう方も多いようです。学校に入学してから接種するからいい、と思っている方もいるかもしれません。
理由はどうあれ未接種者の増加は見逃せない問題です。法律の改正により、以前は学校でも行われていた風疹(ふうしん)やBCGは現在では学校では行われませんし、学校で再接種する日本脳炎や二種混合ワクチンも乳幼児期の接種がしっかり行われていることが前提に効力が得られるものなのです。
麻疹(ましん)の接種率低下により中学校で麻疹が集団発生したという話もきかれます。もし、受験時期や妊娠中などに発病が重なってしまったら大問題です。そうならないためにも、今のうちにお子様の予防接種漏れがないか、再確認なされてはいかがですが。
 個別接種の自己管理に不安があるという方も多いでしょう。こんな時には、地域のかかりつけ医に相談してほしいと思います。個人のことをよく知っている医師が相談に乗り、適時に接種を行う。これが個別接種の一番の利点なのですから。

(かるべ皮フ科小児科医院院長・軽部敏昭)

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介護保険
 今から四年前のことですが、寝たきりの七十四歳の女性が何も食べられずに衰弱死して発見されました。介護していた七十九歳の夫が急死したからです。高齢化社会がもたらした悲惨な事例として、新聞、テレビで大々的に報道されました。
その後も「老老介護」は年々進み、介護する高齢者の心身両面の負担はさらに増大しています。
家族の負担を少しでも減らそうと、社会全体で支え合う介護保険制度が二〇〇〇年度から施行されました。
介護保険の対象者は六十五才以上の高齢者(第一号被保険者)と十五種類の特定疾患が原因で介護が必要となった四十―六十四歳の障害者(第二号被保険者)です。市町村の介護認定審査会で、介護の必要度を計る要支援、要介護1―5までの六段階の要介護認定を受けると、介護サービスを利用することができます。
要介護認定者は介護保険開始時に二百十八万人でしたが、〇四年九月には四百二万人と、四年間で約百八十四万人も増加しています。特に介護度の低い要支援、要介護1の認定者は徐々に増加し、現在は認定者全体の約半数を占めています。
介護サービスには自宅で暮らしながら利用する居宅サービスと、施設に入所する施設サービスとがありますが、問題点が少しずつ明らかになってきています。
要介護認定者の介護度が二年後にどう変化したかを日本医師会で調査したところ、介護度の改善は約8%とわずかで、三・四人に一人は介護度が悪化していました。寝たきり防止の介護サービスとはほど遠い結果で、サービスの質をさらに向上させることが今後の大きな課題の一つです。
また、通所や訪問リハビリテーションなどの実施可能な施設は都市部に比べ、郡部や山村で極端に少なく、地域格差が拡大しています。大変残念なことですが、受給者の皆さんが必要とするサービスを十分受けられないのが現状です。
介護保険法は見直しの規定により、介護保険法改正案が今国会で審議されています。改革の目玉の一つとして、要支援や要介護1の介護度の低いお年寄りに筋力トレーニングなどの新たな介護予防サービスが導入されています。自立への意欲を減退させないよう、精神的ケアを含めた実効性のある運用が求められます。
 本来、介護保険は自宅で自立した日常生活を送れるように、生活実態に合ったサービスを提供するもの。この理念を見失わないような法改正でありたいものです。

(小林医院院長・小林正樹)

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医療ボランティア
阪神淡路大震災五日目深夜、私は医療ボランティアとして神戸に向かいました。市内に近づくにつれ、ガレキの山が車道にまではみ出しており公園では車やテントの中で避難の人たちが眠りについている様子。午前二時に、救護所が設置されていた長田区役所に到着。荷物を置くやいなや、初日より奮闘を続けてこられた医師団と交代しました。
 救急車のサイレンが鳴り止まない中で夜が明け、隣の警察署の駐車場では、袋詰めされた遺体が次々と運び込まれ、検視をしているのが見えました。
区役所内の電気は確保されてはいましたが、水道は破壊されたまま。そのため、水洗トイレは使用できず、大便は新聞紙の上ですませ、それをゴミ袋の中に集めていました。また、安全のため暖房器具の使用が禁じられていたため、とにかく寒い。避難所では被災者は皆、昼間でも毛布にくるまって横になったままで、ボランティア医療班の中でも体調を崩す人が続出しました。
大きな外傷者や重篤な疾患の方は既に医療機関に収容されていましたが、劣悪な環境での避難生活のため、風邪をひいたり、体調不良の人が増えており、避難所を回ったり、救護所に待機してその治療に当たりました。  
震災一週間を過ぎたころから、不眠、抑うつ状態、被災した自宅に入れないなどの心の問題を訴える患者さんが目立つようになりました。いわゆる心的外傷後ストレス症候群(PTSD)で、このころから被災者の「心のケア」も始まりました。
救急車で心筋梗塞(こうそく)の患者さんを搬送した帰りに、消防隊の方から震災直後の話をうかがうと、防火槽に水がなく、火災を目の前にして無力だった悔しさを切々と語っていました。被災地では海外や全国から駆けつけた救護チームの活躍を目にし、悲しみの中にも熱いものを感じました。
われわれ医療ボランティアを取りまとめ、配置を決めていたのは区役所の保健師さんでした。彼女たちの不眠不休の活躍には頭が下がります。そこで痛感したのは「ボランティアコーディネーター」の重要性です。
現在、大きな災害が生じた時の対応は地元の組織だけでは不十分でボランティアの力を必要とします。ところが、ボランティアに応募する人々は大勢いますが、その人たちの能力を十分に生かせる立場の人が少ないようです。ぜひ、各市町村に、災害に備えてコーディネーターを設置してほしいと思います。

(小島医院院長・小島 崇)

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産業医
 皆さんの中に「最近どうも頭が重い。脳梗塞(こうそく)だろうか」と不安な思いをしたことがある人がいるかもしれません。
 CTや磁気共鳴画像装置(MRI)で脳の検査をして脳梗塞ではないと診断されたとしても安心はできません。高血圧や糖尿病に代表される生活習慣病を持っている人は油断をしていると徐々に進行し、ある日突然脳梗塞や心筋梗塞を発症することがあるからです。
 不摂生な生活をしている人は生活習慣を改め、血圧や血糖が高めの人は早期に治療を始めてください。といっても何も症状がなければ病院へは行かないと思います。そこで、普段は元気に働いている労働者の健康をチェックするために、医師が会社へ出向くことになります。そのような仕事をする医師を産業医といいます。
 以前は職場での事故や有害物質による健康障害を防ぐことが、産業医の職務でした。それが最近、生活習慣やストレスによる心の病の予防にまで広がりました。
 大きな事業所には産業医が必ずいます。しかし、小さな事業所(従業員五十人未満)には産業医はいません。六割以上の労働者は産業医のいない環境で仕事をしているのです。そこで、厚労省は小さな事業所で働く労働者の健康を守るため「地域産業保健センター」の設置を医師会に依頼してきました。全国の郡市医師会がこの依頼を引き受けてセンターを設置しました。
 このセンターはコーディネーターと保健師、登録産業医により運営され、相談窓口の開設や会社を訪問しての保健指導を行っています。小規模事業所で働く人ならどなたでも、病気、メンタルヘルス、生活指導などを受けることができます。
 会社で行う定期健康診断の異常所見者率は40%を越えています。病気の種類によっては、症状がないからといって放置することは非常に危険です。会社の健診で異常があったら、会社の専属産業医や地域産業保健センターの産業医にご相談ください。
 家庭に「かかりつけ医」があるように、会社に「産業医」を持ってください。
そうすれば家庭と仕事の両面から総合的に健康管理、健康増進を図ることができます。

(阿久津医院院長・阿久津博美)

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10代の性
「緊急避妊薬をください」
すっかり日も落ちて暗くなった夕方、そろそろ診療も終わりという時間にまだ幼さが残る女子高生が制服を着たまま外来診察室に入って来ました。「絶対100%確実という訳ではありませんが、性交渉をして二、三日以内に緊急避妊薬を飲めば望まない妊娠を防ぐことができます。」と、先日近くの高校で性に関する話をした効果が早速現れたようです。
「性感染症を防ぐためにはコンドームも必要って話したよね」
「ちゃんと着けていたんですけど途中で外れてしまったんです」
 二000(平成十二)年九月十日の下野新聞の1面トップで、「栃木県内の十代少女の中絶件数は過去最多、全国で最高」という記事が大きく第一面に掲載されました。「淋(りん)病やクラミジアなどの性感染症の感染率も栃木県の十代は全国データに比べると非常に高い」という解説も付け加えられていました。
クラミジアは無症状のうちに女性の不妊症を起こすといわれています。このままの状況を放置していると、エイズなどの感染症も増えて大変なことになりそうです。
 一九八八年、私が矢板市で開業してからのデータをまとめてみると、確かに開院当初は年間十例前後と少なかった十代の中絶件数が一九九五年ころから急に増えはじめ、九八年には年間五十件近くにまで達していることに気づきました。
 それまではひたすら安全で快適なお産をしてもらうことが地域の女性にとっては大事なことなのだと思って自分の診療所に閉じこもっていたのですが、どうも自分の施設の中にいるだけでは事態は解決しそうにありません。ちょうど栃木県産婦人科医会が学校で積極的に性教育を行うことを推進することになり、請われるままに北は黒磯、南は烏山の学校まで出かけていくことになりました。
その効果もあってか、私の施設を含めて栃木県内の数字もここ数年は大分いい方向に向かっているようですが、まだまだ予断は許されません。特に最近ではある種のウイルス感染が若年者の子宮頸(けい)がんを引き起こすことが問題になってきています。
これからも積極的に学校に出かけて性に関する話をするとともに、若い人同士がお互いに教えあう「ピアカウンセリング」活動などもサポートしていきたいと考えています。
出産のみならず子育て支援、また思春期から更年期まで女性の生涯を通じた健康に関する「かかりつけ医」が地域の産婦人科医の役目です。

(きうち産婦人科院長・木内敦夫)

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たばこ
 外来で診察していると、患者さんや親御さんからたばこのにおいが漂ってくることがあります。
 「先生、せきや痰(たん)が出るんだけど、肺がんじゃないのかな。」「たばこを吸ってるからじゃないの。禁煙して様子をみたらどうですか。」「いやあ、やめられないな。でも、ちょっと減らしてみるよ。」
「やめないと、意味ないですよ。」などという会話が、しょっちゅうあります。
たばこの煙は、二百種類もの有害物質を含んでいるため、がんや心筋梗塞(こうそく)、脳卒中など、多くの病気の原因や危険因子になっています。特に、煙が通る口の中やのど、肺への影響は大きく、咽頭(いんとう)がん、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(息がつまって苦しい病気)の大部分は、喫煙が原因で発病します。
また、たばこの煙に含まれているニコチンは麻薬と同じように、精神的、肉体的な依存性がとても強いために、心筋梗塞やがんを患ってもやめられない人がいるほどです。
お父さんやお母さんのの喫煙も問題です。親たちの吸ったたばこの煙によって、子どもの乳幼児突然死症候群、中耳炎、う歯(虫歯)などの病気が増えることが知られています。ぜんそくなどの呼吸器疾患も悪化しやすくなります。
 これらのたばこの害を広く一般に知ってもらうために、県医師会ではラジオで禁煙キャンペーンを行ったり、小学生を対象に禁煙ポスターコンクールを実施しています。
塩谷郡市医師会でも独自に禁煙ポスターを作成して各医療機関や公共施設に掲示したり、妊婦さん向けに喫煙の害を啓発するカードを作成し配布しています。
 世界中の医師がたばこによる健康被害をなくそうとしているのですが、実際に患者さんに禁煙を勧めると「喫煙しても長生きの人を知っている」とか「そんなに有害ならば、なぜ、国がたばこを禁止しないのか」といった反論をされることがあります。
確かに、どんなに不摂生をしていても長生きする人はいます。
でも、たくさんの調査で、喫煙しない人のほうが五年から十年長生きし、元気に生活できる健康寿命も長いことがわかっています。また、たばこは違法なものではありませんが、広告には健康への悪影響が明記されています。
 喫煙しないことは、健康管理の基本です。たばこの害が心配な方、たばこをやめたいと考えている方は一度かかりつけ医にご相談ください。

(森島医院院長・森島 真)

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救急医療
 一般に生命や身体機能が脅かされるような緊急事態に対して施される医療を救急医療と呼びます。
 救急医療にはランクがあります。例えばおなかが痛いという場合、まずかかりつけの先生に診ていただき、それがおなかをこわした程度のものであれば、お薬をもらうだけで十分です。このような医療を一次救急と呼びます。
ところが「どうも急性虫垂炎らしい」となると県から指定を受けた一定の基準を満たしている医療施設に紹介され、そこで手術などの治療を受けることになります。これを二次救急と呼びます。
さらに、より重篤な、例えば腸を養う血管が詰まって腸が腐ってしまったというような場合は、より高次の医療のできる医療施設、本県では二つの大学病院と済生会宇都宮病院などが、治療に当たります。これを三次救急と呼びます。
それぞれの医療機関は各自の分野に応じた活動をしていますので、医療を受ける側にも適切な判断が求められます。例えば、三次救急施設に風邪ひきの人が殺到したら、その施設は本来の活動が出来なくなります。
一次から三次までの救急医療制度が円滑に運営されるためには、各医療施設や救急隊の努力だけでは不十分です。社会全体が人的、物的資源を効率的に活用しなければなりません。正しい権利意識を持つとともに、助け合いの精神と良識が何よりも必要とされます。
救急医療には必ず問題がついてきます。まあ考えても見て下さい。 あなたの家の玄関に見も知らぬ人が、突然助けを求めて転がり込んで来たらどうされますか?救急医療も全く同じです。いかなる状態で何が起こったのか、どんな合併症があるのか、どのような薬をのんでいるのか分からないままに緊急の処置を行うわけです。
ですから、医療を施す側だけでなく、医療を受ける側も大きな危険性をはらんでいるのが現実です。このような危険性を少しでも軽減させるためには、各自の病気や服薬状態などを記載した手帳を常備しておくこと、さらに相談に乗ってくださるかかりつけ医を持つことが何よりも大切です。
医療の根源は人類愛であり、各医療施設のスタッフは最大限の努力をしています。しかし、あなたの体を守るのはあなた自身です。日ごろから自分の体に注意し、救急医療のお世話にならないように、健康を維持することこそ、現代人に一番求められているといえます。

(黒須病院院長・金澤曉太郎)

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学校医
 一列に並んだ後ろから、診察を受ける友だちの様子を不安気にのぞき込んだ健康診断。胸をドキドキさせながら順番を待った予防接種。そしてそこにいるのは、町の医院で見覚えのある学校医。
学校生活を離れて長い歳月を経ても、こんな光景が目に浮かぶ方は少なくないでしょう。それだけ学校医は身近な存在と言うことができます。
しかし、その活動といえば健康診断や予防接種以外に何があるかは知られていないと思います。いったいどんな活動をしているのでしょうか。
 学校保健法という法律で、学校医の役割は、「学校保健を効果的に運用しその実績の向上に努め、児童・生徒および学生ならびに教職員の健康増進を計る事」となっています。
これでは難しくてよくわからないので簡単に説明してみましょう。
 よく知られている活動には、小学校入学前に行う就学時検診、入学後毎年行われる定期検診、そして法律に基づいて行われる予防接種があります。これらは学校医が児童・生徒と直接触れ合える機会であり、根幹をなす活動といえるかもしれません。
特に二〇〇三年度からは、結核予防法が改正になり、小中学校でのツベルクリン検査、BCG接種が廃止されたため、定期検診の重要性が一層増してきました。
 学校伝染病の予防に必要な指導と助言も行います。インフルエンザの流行期には特に気を使います。
学校給食を提供していく上で食中毒の予防処置に従事するのも大切な仕事です。アレルギーやシックハウス症候群などにみられる学校環境の改善に関し指導助言も行っています。
 これからの学校医は直面しなければならない問題が多く存在します。
社会環境の多様化は、いじめや不登校、喫煙や薬物の乱用、性問題、生活習慣病の低年齢化などを引き起こします。従来の身体検査的な観点からだけでなく、心や食育などを含めた健康問題を把握していかなければならなくなっています。
多くの問題を抱え、学校医は今後ますます学校、家庭、地域との連携を積極的にかじ取りしていく必要があるでしょう。

(かるべ皮フ科小児科医院院長・軽部敏昭)

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増える異常死
 警察医は、原因がはっきり分からずに亡くなった方の死因の検索を行います。これを検視と言いますが、特に寒い季節はその数が多くなります。 
 昨年暮れは急に寒さが厳しくなったせいなのか、検視の数が急に増え、十二月三十日、三十一日、一月一日、三日と続き、わずかひと月の間に十一例の事案がありました。
 そのうち四人は少なくとも十年間は医療機関への受診がない方で、また二人は過去に受診歴があるものの、近年受診したことのない方でした。いずれも脳や心臓の病気による急死でした。
 数年前、一人住まいの高齢の方の検視をしました。親族や近所の方たちの話から次のことが分かりました。
 この方は生前一度も医療機関を受診したことがなく、たとえ寝込むことがあっても自然に治るのを待っていたそうです。その時も発熱していたのですが、知人に「安静にしていれば治るから」と言っていたそうです。検死の結果、その当時流行していたインフルエンザによって亡くなったことが推測されました。医療を受けていれば元気になられたと思われ、残念です。 
 不治の病といわれていたがんでも、医学の進歩によって延命はもちろん、完治することも多くなりました。脳や心臓の病気になっても、内服薬治療や高度の外科手術などで、天寿をまっとうすることも可能になりました。しかしながら、私自身もそうありたいと願うような、無病息災で平均寿命を超え、眠るがごとく永眠された方の検視に出会うことはとてもまれなことです。
 一病息災という言葉があります。健康に自信のある人より、ちょっとした病気を持っている人の方が自分の健康に気を付けるから長生きするという例えです。実際「よくここまで我慢したな」という患者さんや「もう少し早く受診してくれれば」という患者さんが時々見受けられます。
 頭が痛い、目がかすむ、耳鳴りがある、肩が凝る、背中が痛い、動悸(どうき)がする、胸痛、腹痛、腰痛、歩行障害、頑固なかゆみや発疹(ほっしん)、下肢のむくみなど、自分では軽く考えられる症状でも気軽に相談できる「かかりつけ医」を持つことにより、時には重大な病気が見つかることもあります。
 近年、本県全体でも異常死は増加し続けています。予防できる病気での異常死は「かかりつけ医」への気軽な相談により減少していくと思っています。

(根本医院院長・根本靫雄)

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レセプト
 四月から自分のレセプトが簡単に見られるようになりました。「個人の『情報』は個人のもの」という個人情報保護法が施行されたからです。もちろん、加入している保険者に「見せてほしい」と請求する必要はあります。保険者は、保険証に名前や住所が書いてあります。
 一般にレセプトと呼ばれているものは「診療報酬明細書」といいます。医療機関では、料金の一部を患者さんからいただいて、残りを保険者に請求します。その明細書がレセプトです。
 レセプトには病名や診療内容が細かに記入されていますが、保険制度が複雑を極め、さらに専門的な項目が多いために一般の人にはとても分かりづらいと思います。
 誤解されやすい項目に「初診」があります。最初に診療所を訪れた時だけ「初診」ではないのです。その病気が治り、別の病気になると、また「初診」ということになります。同じ病気で継続して受診する時に「再診」となります。
 「指導」という欄もあります。別に医者が威張って「指導!」と言うわけではありません。医者は薬の名前や作用を伝えることになっていますが、これが「指導」の欄に記載されます。
 また、「特定疾患療養指導料」も同じ欄に記載されます。「特定」の意味は厚生労働省の大臣が特定したというだけで、高血圧などのありふれた病気です。この指導料も「禁煙しなさい!」と言われると「指導を受けた」と実感するでしょうが、「たばこはねえ…」などと暗に禁煙を勧められただけでは指導料を払うのに抵抗があるかもしれませんね。実際には診療行為そのものなのにレセプトでは「指導」となるのです。
 「継続管理加算」という項目もあります。月をまたいで受診した時に診療所では五十円余計にいただけるのです。何を管理するのかは厚労省も含め、誰も知りませんが。
 三十年ほど前、薬の卸値と保険の値段の差(薬価差)が大きくかけ離れていました。そして診察料は低かったのです。結果として薬を使うほど収益が上がるようになっていました。
 これではまずいだろうと、薬価差をなくして診察料に回すことになりました。その時に、このような変な項目を旧厚生省がつくったのですが、それを検討する場に、保険者の代表も医師会もいたのです。当時はレセプトが開示されるなどと思いもよらなかったでしょうから、関係者さえ理解できればよいと考えたのに違いありません。
 今回のレセプト開示を機会にもっとわかりやすい診療報酬制度をつくりたいものです。

(戸村医院院長・戸村光宏)

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リビングウィル
 最近、米国であった女性の尊厳死について、大統領が声明を発表したのをはじめ、政界や宗教団体など各方面に論議を呼んでいると新聞は報じていました。
 十五年も植物状態だった四十一才の女性が裁判所の判決に従って栄養と水分の補給を停止され死亡しました。「妻は人工的な延命を望んでいなかった」と主張する夫と延命を望む女性の両親が七年にわたり法廷で争ってきたということです。
 もしこの女性が「自分が不治の病や持続的な植物状態に陥った場合は人工的な延命処置はしないで欲しい」という意思表示を書面ではっきり残していたら何も問題はなかったと思われます。
 このような書面をリビングウィルと言います。生者の意思あるいは生前の遺言というような意味ですが、遺言は死後遺産の配分相続等が主な内容なのに対し、リビングウィルは自分の終末医療に関して自分の意思を書いておくというものです。
 米国ではリビングウィルという言葉は一九七〇年代から使われ始めました。このころニュージャージー州の最高裁で長い間植物状態だった女性に対し、初めて尊厳死を認める判決がありました。それから同じような処置を容認することを法制化しようとする運動が起こり、一九七六年、カリフォルニア自然死法が制定され、現在では全米四十二州で同様の法が制定されています。日本ではまだ法制化の動きはありません。
しかしながら、このような趣旨に賛同する人も多く、またこのような終末医療に理解を示す病院も増えているようです。
 私どもは皆、安らかな死を願っているわけですが、明日にも重度の寝たきりや植物状態になるかも分かりません。医学の進歩は目覚ましいのですが、不治の病もたくさんあります。長期間植物状態の人の姿を見たり聞いたりすると、私はあんな姿で生き長らえたくはないと思う人が多いと思います。
現代医学の最高技術で患者さんを一分一秒でも長生きさせることが貴い医師の使命である半面、患者さんの痛みや苦しみを極力少なくすること、単なる真理追求のための過剰な検査はやらないなどの配慮もまた必要なことです。ことに、死が決定的な状態、あるいは持続的植物状態においては消極的尊厳死も考慮すべきだと思います。
 日本では法制化されていないので強制力はないのですが、こんな時、患者さんのリビングウィルが判然としていれば、大いに役立つものと思われます。さらに、つけ加えるとがんの告知を希望するか、希望しないか、また献体や臓器提供に関しても家族やかかりつけ医などに自分の意思をはっきり述べておくことが大事と思われます。

(中尾内科医院院長・中尾政利)

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五月病・うつ病
 この季節になると、すがすがしい五月晴れの青空とは裏腹に、浮かない表情をして外来にやってくる人がいます。四月に新入社員として働き始め、頑張ってきたのに五月の連休明けくらいから、なんとなく気分が落ち込んできたというのです。さらに身体がだるく、やる気が出ない、仕事に集中できない、などと訴えます。
 こんな状態を「五月病」といいます。正式な医学用語ではありませんが、もともとは大学に入学した学生がこの時期に無気力になることをさしていました。最近は学生ばかりでなく、社会人など誰にでもみられます。
一般的にはまじめ、きちょうめん、完全主義、内向的な性格の人がなりやすいといわれています。新しい学校や職場でのさまざまなストレスが原因となるようです。また、この状態は五月に限らず、転勤、転校、転居などで新しい環境となり、ストレスがかかったときにも起こり得ます。
でも、心配することはありません。少し自分を見詰めなおして、焦らず慌てず考えすぎずに、たまったストレスを吐き出せばいいのです。趣味や好きなスポーツをする、音楽を聴く、旅行に行く、家族や友人に話をきいてもらう、新たな目標を設定するなど、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。そうすればたいてい一―二カ月でこの状態から脱することができます。
「五月病」のいろいろな対処をしても、なかなか良くならず、かえって症状が悪くなったりする場合は、軽い「うつ病」の可能性があります。
好きだったことや興味があったことにさえ関心がなくなってしまったり、考えがまとまらず、どうしていいかわからなくなったり、すべてを悲観的に受けとってしまったり。眠れない、寝た気がしない、食欲がないなどの症状があるときは、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。
「気の持ちようだから頑張らねば」と無理をしてさらに症状が悪化したり、「精神科」というと昔のマイナスのイメージがあり、かかりたくないと受診をためらいがちです。しかし、早期に心身の休養と適切な治療ができれば、再び元気な自分を取り戻すことができるのです。
私は「うつ病」は「心のかぜ」「心の骨折」と思っています。誰だってかぜで高熱があれば仕事を休んで休養をとるでしょうし、足が骨折していたら無理に歩くことはしませんよね。心の病気はそういう病気と一緒で、いずれ治る病気なのだと理解してください。一人で悩まず、遠慮せず、かかりつけ医に相談ください。昔と違って精神医療は地域に開かれているのです。

(氏家病院副院長・松村 茂)

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医療の安全性確保
病気の治療目的を達するための医療は有効でかつ安全でなくてはなりません。しかし、最近ではこの常識からかけ離れた医療の実態やその後の対応がたびたびマスコミで報道され、医療の安全性だけでなく医療人の考え方までもが問われ始めています。
日常の医療行為については、もちろんこれまでも細心の注意が払われてきましたが、正直に言えば完璧とは言い難いのが実情です。
そこで最近ではすべての医療施設において初心に戻って「人間である限り、過ちをおかすことは避けられない」ことを前提にした医療の安全性確保に、新たな取り組みを始めました。
医療の現場ではひやりとしたり、はっとしたり、事故には至らない小さなミスに出会うことがあります。このことを「ひやり、はっと」と呼び、このような事例を集めて、どのような場合にミスが起きるのか検討しており、日本医師会でも「ひやり、はっと集」という冊子を作成し各医療機関に配布しています。
実際は多くのミスの中で事故につながるミスはごく一部です。なぜなら、すべてのミスは人と人との連携や二重三重にも張りめぐらされた医療機械の安全装置などによってチェックされて未然に防がれるからです。
もちろん、だからといってまだ満足ではありません。さらに積極的にミスを事前に防ぎ、もし起きても事故に至る前の段階で阻止しようとしています。
その方法は施設によって多少違いますが、まずどんな小さなミスでもすべてを委員会に報告させて、その原因を徹底的に分析して以後の対策に役立てることです。そして不幸にして事故に至った場合は、当事者に正直に報告させ公平な目で判断して適正な賠償責任を果たし、情報開示をすることが重要です。
また、医療のミスを防ぐには患者さんも医療者にすべてを任せるのではなく、自分の病気を勉強して病気の治療に参加することも大切です。
もし、自分の病気や治療法について疑問や不審なことがあれば気軽に質問してください。医師でも分からないことはありますし、患者さんの目が医療の質を向上させることもあるはずです。
以上のような取り組みは全国的に行われるようになってきましたが、成果が数字となって表れるには、しばらく時間が必要だと思います。

(尾形クリニック副院長・宮下厚)

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スポーツ医の役割
子どものころ、体育が一番好きな教科だった人も多いのではないでしょうか。スポーツをすることはとても楽しく、心身の健康を保つ点でも大切なことです。それが、社会人になるといつの間にか体を動かさなくなり、肥満や運動不足のために生活習慣病予備軍の仲間入りをする人も多くなります。
ところで、スポーツには大きな落とし穴が待ち構えていることがあります。例えば、塩谷郡市医師会のスポーツ医がサポートする真夏の高原山トライアスロン大会では、毎年数人は軽度の熱中症になってアイシングと水分補給が必要になります。しかし、必ず医師が待機して大事に至らないようにしています。このように、落とし穴にはまらないようにサポートするのがスポーツ医の仕事です。 
とはいえ、中には予期できぬ事態が生じることもあります。私が救護医として詰めたあるマラソン大会はかなりきついコースでした。そのため、万が一、一人でも心臓に異変が起きたらと気が気でなく最後の一人が到着するまでゴール地点で立っていました。スポーツ医の大きな役割の一つがこのようなスポーツ大会での救護医としての活動なのです。
また、スポーツによる傷害などの講習会を行うこともあります。このような講習会には、さまざまなスポーツの指導者が参加し、少年スポーツ大会での事故が防げたこともありました。
 このようなスポーツ活動指導者講習会などは、各自治体や団体からの要請に応じて医師会が行っているものです。各種講習会の講師、各地でのマラソン大会や体育大会などに救護医としてドクター派遣をしています。
 申し込みは二カ月程度前までに県医師会まで、行事名や日程、ドクターの業務内容などを明記の上、ご依頼ください。ただし、学校行事は学校医が担当することになりますので、その対象にはなりません。
 今後も、ママさんバレー・スポーツ少年団・老人会や老人ホームでの講習会の講師を務めたり、以前から問題にされている、小・中学生の部活における過度の運動とそれに伴う障害に対する対策など、スポーツ医として、取り組んでいくことになるでしょう。
スポーツ医はスポーツを通じた地域の「かかりつけ医」です。

(村井胃腸科外科クリニック院長・村井成之)

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周産期医療の危機
「妊娠二十五週なんですけど、お腹が張って破水したみたいなんです」
「まだきっと五百cくらいにしか育っていないので、厳しいと思うけどどうしますか?」
「何とか助けてください」
家族からの強い要請を受けて母体搬送先となる医療機関探しが始まりました。今から十年以上も前のことです。当時は県内に周産期医療センターは一つもない時代でした。県内の主だった医療機関すべてに断られて福島、群馬、埼玉と次々に電話をかけまくったのですがどこも受け入れてくれません。
絶望的な気持ちになってきたところでやっと水戸の医療機関から受け入れてくれるという返事をもらうことができました。救急車で二時間弱の道をサイレンを鳴らしながら走って行きました。半年ほどして「無事退院することができました」と赤ちゃんを連れてあいさつに来てくれたお母さんの笑顔が今も忘れられません。
私が矢板でお産にかかわるようになって今年で十九年目になるのですが、これまでなんとかやってくることができたのは近くの塩谷病院や大田原赤十字病院などの地域中核病院(二次医療機関)が切迫早産や妊娠中毒症などのハイリスク妊娠の患者さんを快く受け入れてくれたおかげです。
十年ほど前に自治医大と獨協医大に相次いで総合周産期センター(三次医療機関)がオープンしてからは県外に患者さんを送るというような苦労もすっかりなくなりました。
ところが、今年四月になって大田原赤十字病院から一通のお知らせが届きました。
「新生児・未熟児の入院に関しては主に、院内出生児(在胎三十四週から三十五週以上)の診療を行うために、開業産婦人科医からの新生児搬送の受け入れはほぼ不可能と思われます。」
小児科診療体制が常勤四人から二人に減少することになるので入院の受け入れ制限をせざるを得ないということです。
県北部の周産期医療体制はいよいよ危機的な状況に陥ってしまったようです。五月二日の下野新聞でも県内二つの周産期医療センターが恒常的にベッドが満床となっているために、母体搬送を受け入れられないケースが増えていると報道されていました。
激務や医療訴訟の増加で全国的に小児科医や産婦人科医となる若手医師が少なくなっていることが二次医療を担う地域中核病院の医師不足の原因です。自分が住んでいる地域で安心してお産ができないようでは「少子化」に歯止めをかけることはできません。
地域の第一線でお産を担う産科医として県内の周産期医療システムの充実を願わずにはいられません。

(きうち産婦人科医院院長・木内敦夫)

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健診と人間ドック
 Aさん(74)は、昨年夏にかかりつけ医で健診を受け、胸部エックス線で異常を指摘されて当院を紹介されました。詳しい検査の結果は肺がんでしたが早期であったため、手術を受けて現在は元気に過ごしています。
 Aさんのように、健診は病気の早期発見、早期治療を目的に実施されます。しかし、現在、転機を迎えています。
これまでは、検査の項目や方法が実施事業者(健保組合や市町村など)によってバラバラで、比較できませんでした。また、健診後の保健指導も不十分で、結果の通知後は本人任せがほとんどでした。
 このため、厚生労働省は「健診指針」を告示して、健診における検査の標準化や精度管理を適切に実施するとともに、結果を通知するだけでなく、地域や職場との連携を図りながら、きめ細かな保健指導を進めることが示されました。
 また、自営業者や専業主婦の中には健診を受けない人も多いため、公的保険(国民健康保険や健保組合など)による健診事業を拡充する方針も決まりました。
 一方、人間ドックでは健診に比べ検査項目が多く、専門的な診察も行われますが、これは病気の早期発見(ニ次予防)に加えて、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病の発症を防ぐこと(一次予防)も目的としているためです。
 健診や人間ドックの有効性については、「健診を受けても寿命は延びない」「がんの見落としがある」などの批判があるのも事実ですが、費用対効果を考慮した精度の高い検査を組み合わせて、最近ではより有効な方法が開発されています。
 人間ドックで大切な点は結果を過信しないことです。自覚症状があり、具合が悪い場合には、ドックではなく医療機関を受診する方が適しています。
なぜなら、ドックは検査項目があらかじめ決まっているからです。
健診や人間ドックにおいても、医療機関同士の連携が大変重要であり、Aさんの場合のように地域の「かかりつけ医」と病院の「専門医」とのチームプレーがますます大切になっています。

(塩谷総合病院副院長・沼尾利郎)

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国民皆保険前の時代
 一九六一年に国民皆保険が実現するまで、日本は自由診療(自費)でした。
私が内科医になったころの四〇年代は、薬は配給制で、抗生物質もペニシリンやクロマイくらい。しかも大部分が高価で闇でないと手に入らないありさまでした。
当時は結核が国民病と言われ患者も多く、私が勤務していた病院でも、結核患者のベッドは五百床以上ありました。私も常時五十人くらい結核の入院患者さんを受け持っていました。結核薬も配給でしたが、横流しされてあまり入手できず、多くの患者さんが亡くなっていきました。
薬剤には粗悪なものもあり、リンゲル(生理的塩類溶液)を点滴すれば寒気がでるものがあったり、アンプルを切ると破裂するものもありました。軍医であった先生方は鉄瓶に塩を入れて煮沸し、その食塩水を点滴するなど、それぞれの先生方が試行錯誤、悪戦苦闘の日々。衛生状態も悪く、往診に行けばかえってシラミをたくさんもらって来る始末でした。日本脳炎、ジフテリア、チフス、赤痢、麻疹(ましん)脳炎、破傷風などの発病も多くみられました。
ある時、町に赤痢が大流行。小・中学生、飲食店店員など全員が検便することに。すると百人近くが赤痢菌保菌者と判明し全員隔離する事態に町中パニック状態。ある飲食店の主人は奥さんの便を二つに分けて自分のものとして提出したところ何と奥さんが陽性、かえって裏目に出て保健所から大目玉。富山越中の薬売りの人が赤痢になり隔離されたものの、治療途中で脱走した事件もありました。
今では予防接種のおかげもあり、日本脳炎やジフテリアのような伝染症は見かけなくなりました。また、国民皆保険になってからは経済的な差もなく治療を受けることができ、結核治療も公費負担になるなど社会保障制度も充実し、極めて質の高い医療を受けることが可能になりました。
自由診療時代の医療費は盆暮れ勘定でした。医療費が払えないので往診の依頼もほとんどが重体になってから。当時、小さな子どもがせきをしながら寝ている家に往診したことがありました。ワラ布団に寝ていました。気の毒でとても集金に行けませんでした。医者はお金の払える人からの収入で生活していました。
食べ物や生活必需品が配給制のころは、それを厳しく守った裁判官が栄養失調で死亡した事件がありました。本当に「おしん」の時代でした。逆に今は、飽食で生活習慣病が増加。「かかりつけ医のココロ構え」も保険診療前とはかなり違ってきていることを実感する今日このごろです。

(檜山医院院長・檜山猛郎)

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医療保険
熱を出した、おなかが痛い、と旅先で最寄りの医療機関に駆け込んだことはありませんか。その時、保険証を持っていないと全額自己負担となり、おおむね五千円ほど支払うことになります。でも保険証があれば三割負担ですので千五百円程度の支払いで済みます。保険証は日本国内ならどこでも使えるし、窓口負担も少なくてすむのです。
現行の医療保険制度にもいくつかの問題点が出てきています。しかし、それに触れる前に現制度の利点について考えてみましょう。
国民は誰でもいずれかの公的医療保険に入ることになっています。これを「国民皆保険制度」といい一九六一年にスタートしました。現行の医療制度の一つの柱で、応分の負担をすることによって誰もが平等の医療サービスを受けることができます。
また、はじめの例のように、医療機関の窓口で五千円払い、その後保険組合が保険負担の三千五百円を患者さんに戻す制度ではなく、保険組合が医療機関に直接支払うので患者さんは一部負担だけですみます。このことを「現物給付」といい、二つ目の柱となっています。
三つ目の柱が「医療機関選択の自由(フリーアクセス)」です。例えばイギリスでは、どんな病気でもまずあらかじめ登録している家庭医の診察を受け、それから専門の病院を紹介される仕組みになっています。そのため、旅先で病気になった時などは混雑した救急病院にかかるより仕方がありません。
もちろん、「医者と患者の相性」などには入り込む余地がありません。日本では保険証を提出すれば「誰でも、いつでも、どこでも」自分のかかりたい医療機関を自由に選ぶことができます。
 これらの三本柱に支えられた医療保険制度のおかげで、日本は先進国に比べて低額で質の高い医療を実現し、結果として健康寿命が第一位、乳幼児死亡が最も低い世界一の長寿国となったのです。
 しかし、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの医療技術の進歩は一方で医療費の増加をもたらします。また、日本の人口構成を見ると、病気になる可能性の高い高齢者の割合が急増する一方、少子化により将来この保険制度を担うべき
若年者の割合は少なくなっています。
そのため、制度を維持するのが困難になってきています。このままでは、世界に誇る国民皆保険制度が崩壊してしまうのではないかととても心配です。

(尾形クリニック院長・尾形直三郎)

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胃瘻
今でこそ、日常診療の場にも普及してきていますが、胃瘻(いろう)についてご存じでしょうか? 口から食べられなくなった患者さんが、口やのどを通さないで胃や腸などの消化管から栄養を取る方法の一つで、おなかの壁の表面から胃の中に直接チューブを通し、流動食などを胃の中に流し込みます。胃に瘻孔(ろうこう)と呼ばれる穴をつくるために胃瘻と呼ばれています。
「口から食べられないから、おなかに穴をあけるのか」「胃から食事をとるですって?」脳梗塞(こうそく)などの病気で、うまく口から食べられなくなった患者さんやその家族に、胃瘻の手術法や経過を説明しようとして、驚かれたことがしばしばあります。
胃瘻をつくる方法には、開腹手術と内視鏡を使う経皮内視鏡的胃瘻造設術(英略がPEGのためペグと呼ばれています)があり、最近はこのペグが主流となっています。私も、ペグのことを初めて知ったときは、比較的簡単に行うことが可能で、しかも患者さんに負担の少ない治療なので大変驚きました。
例えば、脳梗塞の患者さんの中には、後遺症のため自分で食べ物を飲み込むことができなくなる方がいます。そういう患者さんには、鼻からのどを通って胃の中までチューブをいれて流動食などを注入する方法が以前から行われてきました。
しかしチューブが気になって自分で抜いてしまう方もいます。在宅で管理されている方がチューブを抜いてしまった時は家族がチューブを再び挿入できないため、医師や看護師の往診を必要とします。またチューブがのどを通るため、飲み込む練習がうまくいかないという欠点もあります。
胃瘻の場合、飲み込む練習の支障にはならないので、上手に口から食事がとれるようになった方もいます。チューブの定期的交換は必要ですが、管理は簡単で、おなかにチューブが入っていても入浴出来ます。また、口から食事がとれるようになり胃瘻が不要になれば、チューブを抜いてしまうと、通常ニ、三日で穴は自然にふさがってしまいます。
ある病気で十代から食事が取れなくなって長期入院していた方は、ペグを行うことで、入院生活から開放され自宅に戻ることが出来ました。
胃瘻は、食事を口からとることが困難となった患者さんが自宅で治療される場合、管理も簡単なので介護する家族にとっても良い方法と思われます。すべての患者さんに適応はありませんが、一度かかりつけ医にご相談されてはいかがでしょうか。

(高根沢中央病院院長・青木洋)

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目の成人病
 日本は、かつて見ない高齢化社会を迎えています。長生きできることは幸せなことですが、もし目が不自由だったらどんなにつらいか、皆さんは考えたことがあるでしょうか。
 外からの情報の80%以上は、目を通して入ってくるといわれています。朝起きてから夜寝るまで、目は片時も休むことなく働き続けています。「見えてあたり前」と酷使するとやがて目に大きな負担を与えることになりかねません。かけがえのない目です。いつまでも健康に保ちたいものです。
 さて、私たちを取り巻く目の環境は、高度情報化社会を迎え、ますます悪化の傾向にあります。テレビ、ワープロ、パソコンなど、現代人の目は想像以上にオーバーワークです。
 また、人口の高齢化に伴って、『目の成人病』といわれる白内障、緑内障、糖尿病性網膜症も年々増えており、これらの病気による働き盛りの中途失明も、大きな問題となっています。失明を予防するには早期発見、早期治療が大切です。中年になって視力の衰えを感じたら、単なる老眼だけとは限りませんので、一度眼科医による精密検査をお勧めします。
 最近、『目の成人病』の一つである緑内障が注目されています。二〇〇〇年と〇一年に日本緑内障学会が、岐阜県多治見市で大がかりな地域調査を行いました。その結果、四十歳以上の十七人に一人の割合で緑内障が発見されました。
緑内障は眼圧が上昇することにより、目の痛みや視力低下が起きる病気です。この調査から、緑内障は決してまれな病気ではなく、症状がないため、気づかずにいる方がたくさんいることが明らかになりました。しかも、半数以上の方は眼圧が正常範囲にある緑内障であったことも大きな話題になりました。
 緑内障は白内障と違って、視神経が一度障害をうけてしまうと手術によっても回復が困難です。しかし、早期に発見し、治療を行えば、決して怖い病気ではありません。
最近では人間ドックや町の検診でも、眼圧測定や眼底検査で視神経に異常がないか調べるようになってきました。実際、私の診療所でも「老眼か白内障だろう」と思って受診された方の中に、診察によって視神経の異常が見つかり、視野検査を行った結果、緑内障とわかった方が数多くおられます。
 快適な老後を過ごすためにも、『目の成人病』に関心を持っていただき、早期発見に努めたいものです。

(加藤眼科医院院長・加藤晴夫)

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障害
ドタドタッ、バタン。今にも診療所が倒れそうな勢いです。「そっちじゃないでしょ! A君。先生はこっちよ」「いいよ、いいよ。気が向いたら、こっちに来るだろうから、好きにさせておけば」。
実はA君は爬虫(はちゅう)類や魚が大好きなので、診察前に必ず水槽の部屋へ行くのです。私の医院は町の小さな診療所ということもあり、A君のような皆とちょっと違う元気な子など、いろいろな人が来ます。病気は人を選びませんから、多くの個性豊かな老人や子どもたちも診察に訪れるというわけです。
最近の新聞の見出しに「8・2%」という数字がありました。これは県がモデル事業調査として、保育所の五歳児約千人に対し調査を行ったところ、発達障害つまり「勉強や集団生活をすることに問題がある」と疑われた子が8・2%いたという数字です。
多いか少ないかは別として、昔から落ち着きのない子、一人遊びの好きな子、勉強の苦手な子など特別なインパクトがある子どもはいたと思います。医師として園医や校医を経験している者にとっては、お母さんやお父さんから子どもの発育や発達を相談された経験は少なからずあります。
また、こちらが「おやっ?」と思っても、両親が何にも疑っていないのであれば「お子さんは発達に問題のある疑いがあります」と告げるのは難しい現実もあります。A君についても同様で、お母さんから相談を受けて、はじめて私も自分の考えていたことを説明しました。
豊か過ぎる個性あるいは性格の人たちが、社会では「障害児(者)」と言われているのかもしれません。障害児(者)というと何か特別な人と考えてしまうかもしれません。しかし、知的障害、精神障害、身体障害といわれる人たちというのは、日常生活を送るための「支え」が普通の人に比べ、より多く必要な人だと思います。
私たちは日常生活を送る上で多くの友人や仲間、恋人そして家族の愛の「支え」によって生活しています。この「支え」の内容や量などが異なるだけなのだと思います。健康だと思って生活していた私たちでさえ、老化に伴い肉体的、精神的にも多くの障害を抱えるようになり、やがて介護が必要になることと同じではないでしょうか。
何か「おやっ?」と感じた時、幼少時からかかわりのある「かかりつけ医」の先生にならば、家族が相談できるでしょう。不安を感じた時には、「かかりつけ医」の先生に相談することをお勧めします。

(植木医院院長・植木雅人)

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女性専門外来
 近年、雇用機会均等法が施行されてから、社会のいろいろな場面で男女の差がなくなってきています。教育の現場では男女混合の名簿となり、今まで男性の仕事と言われていた所でも多くの女性が働いています。
 しかし、医療の世界では十数年前から、「同じ疾患でも男女ではその発症や治療効果などが異なる」という考え方がアメリカを中心に広がってきました。このような「性差医療」は日本にも取り入れられ、各地で女性専門外来を設置する医療機関が増えてきています。
「女性専門外来」の実態はさまざまですが、身体的、精神的ともに女性特有の疾患に対して女性医師が十分な時間をかけて総合的に診療を行うところが多いようです。
 私の勤務している病院では二〇〇三年四月に、本県初の「女性専門外来」を開設しました。すべて予約制で、一人の診療時間を三十分程度としていますが、それでも時間が足りないと感じることがしばしばです。一般の外来診療とは別の場所で、テーブルをはさんで向かい合って話を伺っています。
「最近、何となく疲れやすく、寝ても疲れが取れないんです。」「生理が不順で、肩こりや顔のほてりが出てきたのは、更年期だからでしょうか」
たいていの方はこのような体に関する訴えで話を始めます。こちらは相づちを打つ程度で、できるだけお話を続けていただくと、しだいに生活や仕事の事に移っていきます。若い方の場合は、幼い子どもの育児に夫の協力が得られず、さらに母親の無理解などが加わっているといいます。私自身の子育ての話を交えて、一緒に解決法を考えたりします。
 更年期の方は、私と同世代ということで、親近感を持って相談して下さいます。他の病院で安定剤などを処方されている方も多く、精神的な問題を抱えています。しかし、その根底には家庭内の悩みがあり、夫婦(別居、離婚、夫の定年)、子供(進学、就職、結婚)、親(嫁しゅうとめ、介護)などの関係が複雑に絡み合っています。お話をしているうちに、問題点の整理がついてきて、自分自身で結論を出していくことがしばしばです。
 体や心にさまざまな悩みや気がかりを持っていても、病院に行くべきかどうか迷ってしまいます。また、行くとしても何科に行っていいのか迷うことになり、結局行かないでいることになってしまします。
そのうえ女性の場合、毎日の生活に追われ、なかなか自分の時間をつくるのは容易ではありません。そのような方に「女性専門外来」を受診していただければと思っています。

(塩谷総合病院女性専門外来担当・服部 緑)

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鬼手仏心
鬼手仏心。
私が大学時代の恩師に教えられた言葉で「外科手術は体を切り開くので鬼のように残酷に見えるが、患者を救いたい仏の慈悲心に基づいている」という意味です。
昔は麻酔薬もなく、手術には大変な痛みを伴ったので、患者も外科医も必死の覚悟であったでしょう。しかし麻酔技術の発達で、この言葉も死語になりつつあり、今どきの若い外科医は知らないかもしれません。
また仏典をひもとくと、不動明王という大魔人みたいな明王が出てきます。この存在は、大日如来がやさしい口調で言っても、分からない衆生を何とか救うために仮の姿として、あんなおっかない顔で現れたものと言われています。
 私は内科医で手術はしませんが、この鬼手仏心という言葉と不動明王が大好きです。やさしくニコニコして、患者さんに接したいのは、やまやまなんですけど、それで自己管理をきちんとしてくれる患者さんはまあ半分にも満たないでしょう。
時には鬼のような顔とまではいいませんが「大変なことになるぞ」と言うことがあります。私が若手医師のころは、それでたいていの患者は、来なくなってしまいました。まあ、私も今では老獪(ろうかい)になり、一呼吸置いて、かくかくしかじかと長々と説明をするわけです。
そうするとだいたいの患者さんは理解し、半年ほどはしっかりと自己管理してくれます。でもまた、もとの木阿弥(もくあみ)になって、同じことの繰り返しです。医者の厳しい言葉というのは、注意される、つまりその患者さんが、その医者に心を注がれているということです。すなわち鬼手仏心ということです。
 私だけでなく、本県の家庭医、いわゆる町医者には患者さんとの駆け引きにたけている先生が多く、大病院にはない面白さがあるので、まずはお近くの町医者をご利用ください。また、町医者といっても、開業する直前は、大病院の指導的立場にいた方が多いのです。
 最後に昔話をして締めくくりたいと思います。
「昔々あるところにたいそう血糖の高い人がいました。重症でしたが、自覚症状がないのであまり気に留めませんでした。さて、何年か後、なんだか目も見えないし、体もだるいんで、病院に行ってみました。そこには、鬼のように厳しいことで有名な医者がいました。でも、医者は、とてもやさしく診察しました。もう厳しくても救うことができないと分かっていたからです。だからその人は、最後まで医者を仏のようだと思っていたそうです。」
おしまい

(大和田内科院長・大和田信雄)

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オーダーメード医療
 七十八歳のTさんは家から往復二時間の市中病院で喉頭(こうとう)がんと診断され、放射線治療の後、喉頭摘出手術を勧められました。しかしTさんは手術に踏み切れず、大学病院で再検査を受け、外来で様子をみることになりました。
 四年以上が過ぎたころ、紹介状を持って私の診療所を受診しました。八十三歳の高齢とは思えない元気なTさんは、軽自動車の助手席に奥さんを乗せ往復一時間かけて来院します。幸い喉頭がんの再発はなく、治療後の経過は順調でしたので、そのむね家族にもメッセージを書いて渡しました。
 春に来られると、次は涼しくなってから。秋に再診されると、次は暖かくなってから。今年亡くなられるまで、いつしか四年が経過しました。最後に見えられた時は、奥さんに先立たれた後なので、さすがにいつもの元気さがなく、気落ちしていた様子でした。
 最近、学会では「診療ガイドライン」という言葉が盛んに言われ、また日常診療の現場では「オーダーメード医療」という言葉をよく耳にします。
 ガイドラインとは、専門学会が全国どこでも同様の治療が受けられるように、画一的な診断・治療法を定めたものです。一方、オーダーメード医療とは「個人の特性に応じた医療」です。
 しかし、ガイドラインがあるからといっても、同じ病気を持った人に同じ治療法を強制することはできません。患者さんにも個別の事情があり、その人の生活様式を考慮に入れた、個人の治療プログラムが組まれ治療するのが望ましく、それが「オーダーメード医療」なのです。
 治療法の説明を受け、さらに別の医療機関に診断や治療について意見を聞く「セカンドオピニオン」を求めたTさんは、結果的に良い選択をされたのではないかと思います。また、Tさんの意見を快く受け入れてくれた大学病院の医師の適切な対応もよかったと思います。信頼して相談できる医師がいるということは大切なことです。
 私がTさんに会うのは半年に一度でしたが、この間、絶えずTさんを励ましてくれたのは持病の呼吸器病をみてくれていた地元の内科医でした。このような「かかりつけ医」をもっていることの大切さを、教えてくれた事例でした。

(耳鼻咽喉科・気管食道科越井クリニック院長・越井健司)

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乳幼児健診
乳幼児健診は、小さなお子様のいる家庭では身近な行事ですね。
 健診には、市町村の保健センターなどで行う集団健診と各自が医療機関で行う個別健診があります。ここでは、より多くの方が利用されている集団健診の話をします。
 健診では、大半の方が
「健康ですよ」の言葉を聞くために来ます。病気で訪れる医療機関での診療とはその点が大きな違いです。
 しかし、健診の重要な役割の一つが異常を見つけるためのスクリーニングである以上、「二次健診を受けてください」とか
「一カ月後にもう一度健診を受けてください」と言わざるを得ないことがあります。
 そこで、家族にお願いがあります。「健康です」と言われに来たはずの健診で、それ以外のことを言われると、予想外で戸惑うのは当たり前かもしれません。しかし、先回りして悲観してしまったり、「うちの子どもにけちをつけられた」と怒らないでください。
 乳幼児健診は決して、パスしなければならないテストのようなものではなく、まして大切なお子様に優劣をつけるものでもありません。適切な時機の治療や療育を逃がさないためのものなのです。
 そもそも子どもの発育や発達は、正常児であっても幅があり、発達パターンもいろいろです。体
が大きければ大きいほど
良いわけではなく、歩き
出す時期が早ければ将来
オリンピック選手になる
というものでもありません。個人差がとても大きいのです。
 私の住んでいるさくら市(旧氏家町)の、ここ数年の健診受診率は、平均95%を超えています。天気の悪い日や子どもが病気の日もあることを考えると、立派な数字だと思います。
 「健診にかかわる者の一人としてうれしい限りです」と、偉そうなことを書きましたが、わが子の健診はサボってばかりでした。当時は、勤務医で休めなかったし、自分で診ているから良いだろうと思ったのです。
 でも今、健診に来る方の母子手帳を見ると、成長の記録に加えて、育児日記的書き込みや、写真まで張ってあります。将来、子どもがそれを見たら、いかに自分の成長を楽しみに見守ってくれた人がいたかを感じるでしょう。
 それに比べて、まっ白なわが子の母子手帳がかわいそうで、ほろ苦い気分になります。そういう精神面だけでなく、後々何か気になる症状が出た時に、いつからその兆候が出現したかを知るのに、健康の記録は大きな手掛かりになります。
 若いお父さん、お母さん、いろいろな意味で役立つ乳幼児健診を大いに利用しましょう。

(高瀬小児医院院長・仲澤博子)

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医療保険
 保険証さえあれば、いつでもどこでも医療が受けられる日本の保険医療制度はとても素晴らしいものです。でも、この制度にもいくつか問題点があります。今回はその一つである保険の財政についてお話しします。
 公的医療保険には大きく分けると国民健康保険(国保、自営業者とその家族が加入)と健康保険(健保、サラリーマンとその家族が加入)とがあります。国保は各市町村単位で運営されています。
健保の中でも中小企業のサラリーマンを対象としたものは政府管掌健康保険といって社会保険庁が運営、大企業の健保は健康保険組合が運営しています。
 医療費は個人が納める保険料と医療機関の窓口での一部負担金、そして自治体や国、企業の負担金で賄われていますが、いずれの医療保険も財政的に厳しい状態となっています。
 その中でも、市町村が運営する国保が財政的に特に厳しい状況です。先日も宇都宮市の国保料が十年ぶりに6・9%も引き上げられると報道されました。これは医療費が年々増加し、しかも長引く不況の影響で国保料の収納率が低下し、財政が厳しくなったからです。
 塩谷郡市二市二町の平均収納率は89%(二〇〇二年)と低く、財政難の各自治体は収納率のアップに向け工夫を凝らしているところです。しかし、
政府は国保に関する国の負担分を減らしてしまいましたので、ますます台所は苦しくなるばかりです。
 一方、健保、特に政府管掌健保も保険財政が厳しく、数年後には赤字に
転落するだろうといわれています。既に組合を解散して国保に加入している所も多数あります。
 財政状態が比較的良い
とされている大企業の健保でも長引く不況のため企業の負担金を抑えようとしています。
 このような厳しい財政を立て直すために、例えば市町村単位の国保を県単位にするなど運営主体を統合して財政規模を大きくし、効率を良くしようとの考えもあります。
 では医療財政が厳しくなった原因はどこにあるのでしょうか。
 日本では高齢者の増加に伴い医療を必要とする人が増えています。また、
医療の進歩も医療費の増大につながります。このような「自然増」があるにもかかわらず、国保負担分は減らされたままなので保険財政はますます悪化する一方です。そし
て政府はそれを解消するために患者の自己負担分
だけを増やそうとしています。
 少子高齢社会は医療保険にも大きな影響を与えていますが、厚労省には良い対策を期待したいと思います。

(尾形クリニック院長・尾形直三郎)

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昼間の小児科
 少子化の世の中ですが、小児医療は「コンビニ化」といわれるように、夜間救急や休日診療には多くの親子が駆けつけます。
 そのような中で、私は昼間の小児科外来専門の勤務医をしています。日勤の時間帯にパラパラやって来る子どもたちを私なりに心を込めて診療しています。でも、患者さんが少ないと病院側は不採算部門という問題を抱えてしまいます。
昼間の外来は夜間や休日の診療に比べ診療を行う側も受ける側も、時間的にも気分的にもゆとりがあります。そのため私も、親や保護者の訴えに十分に耳を傾けることができます。お話をしながら子どもの様子を観察します。
すると「この子は大丈夫」とか「この子は急いで何かしないと大変」とか大体の見当がつきます。それから確認のための診察をしますが、親の訴えと診察所見がずれていたりすることもよくあります。子どもの不機嫌の原因が見つかると親も私もひと安心です。
赤ちゃんは言葉を話さないから診察は大変でしょう、とよく言われます。でも赤ちゃんは体が小さい分、全身の診察が一目で素早くできるので実はとても分りやすいのです。表情や顔色や泣き声など、全身で私に訴えかけてくれます。逆に分かりにくいのが思春期の子どもたちです。おなかを触診中に「痛い?」と聞くと、返ってくる答えは「ビミョー」の一言だけ。あとは私の手の感触で判断しなければなりません。思春期は本当に難しい年ごろです。
昼間の小児科医は休み時間に保育園や町の健診にも出掛けます。最近はその「ビミョー」な世代のまま親になった方から受ける質問に、戸惑ったりびっくりしたりすることも多くなりました。
今年六月下旬、三日連続で背中が寒くなるようなニュースが流れました。
父親にしかられた後、両親を殺し、家をガス爆発させた十五歳の男子。夫婦げんか中に九カ月の娘を五階のベランダから投げ落とした母親。普段から不仲の十七歳の兄を刺し殺した十五歳の弟。
どうぞ皆さん、子どもたちが、もろく崩れやすい難しい思春期を無事に乗り越えるまで、見守り、育て続けてください。体は親を超えても心はまだ子どもなのです。
親から虐待を受けて育った人は、自分の子どもにも虐待を繰り返すといわれています。でも、決して甘やかすのではなく、愛情を込めて育てられた子どもは、きっと温かい思いやりの心を持った人間に育つでしょう。
昼間の小児科医は微力ながら、心を込めて、子どもたちの心と体を健やかに育てていくお手伝いをしたいと思っています。

(菅又病院小児科・菅又久美子)

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生活習慣病
 愛知万博に一万八千年前のマンモスが展示されていますが、そのころの人類はどのような生活をしていたのでしょうか。氷河期で食べる物も少なく、飢餓との戦いだったでしょう。
 その時代に、節約遺伝子と呼ばれるカロリー消費を節約する体質を獲得した人は生存に有利だったのです。しかし飽食の時代と言われる現代の日本では、その節約遺伝子が不利に働いて肥満が増え、生活習慣病も増えていると考えられています。
 生活習慣病とは、毎日の生活習慣がその病気の発症や進行に強い影響を与える病気のことであり、生活習慣の改善により予防することができる病気のことです。以前は成人病と呼ばれており、加齢・老化が大きな原因と考えられていました。早期発見と早期治療が主な政策でしたが、名称変更により発症予防にも重点が置かれるようになりました。
そして子どものころからの生活習慣も重要視されるようになりました。大人は自分たちのためにも、そしていつも大人を見ている子どもたちのためにも良い生活習慣を心掛けたいものです。
 がん・心臓病・脳卒中の三大生活習慣病は、日本人の死因の60%以上を占めています。がんは二十年以上前から死亡率の第一位であり、予防としては禁煙以上に確実な方法はなかなか見つかりませんし、これからも早期発見と早期治療は重要となります。
二位の心臓病と三位の脳卒中の死亡率を足してみると、がんの死亡率とほぼ同等になります。この二つの病気を引き起こす動脈硬化は、日ごろの生活習慣が大きな要因であり、生活習慣の改善により予防が期待できます。
 年齢を加えることによる自然な動脈硬化は宿命です。しかし、死の四重奏(肥満・高血圧・高脂血症・糖尿病)と呼ばれる病気をご存じでしょうか。症状がないままにじわじわと進行し、二つ三つと重なると、動脈硬化の進行がとても速くなります。肥満を恐ろしい病気と考える人はほとんどいないでしょう。また、特に高血圧は動脈硬化の大きな要因と考えられており、理想とされる至適血圧(最大血圧一二〇・最小血圧八〇以下)を目指す時代となりました。
 健診結果で単独データはギリギリセーフでも、四重奏のように重なった状態を放置すると危険なこともあります。かかりつけ医に相談して、総合的に診てもらいましょう。
 また、生活習慣病は日ごろの趣味嗜好(しこう)も関係しており、何でも話せる気の合うかかりつけ医を見つけることも、生活習慣病の予防として大切なことかもしれません。

(光陽台診療所院長・阿久津)

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最新の情報発信
 Aさんはお昼の人気健康番組で取り上げられた病気の症状が、すべて自分に当てはまるような気がしてしまうそうです。そして診察の時に「わたしは大丈夫でしょうか」と心配そうに尋ねますが、詳しい説明を聞いて自分に関係ないことがわかると安心して帰っていきます。
 現代は「健康ブーム」と言っていいくらいに健康に関する情報がはんらんしています。テレビでは毎日どこかの放送局で健康や病気に関する番組が放送されていますし、インターネットで病気や薬に関する情報なども簡単に手に入れることができます。
 しかし、多すぎる情報や偏った情報に振り回されてしまう人も多く見られます。テレビの放送の後に街中の商店のココアが売り切れになったこともありました。
 では、あふれる情報から正しい知識を得て自分の健康に役立てるにはどうしたらよいでしょうか。
 慢性の病気などで定期的に医療機関を受診している方は「かかりつけ医」に相談するのが良いでしょう。何か気になる症状がある方も、早めに医療機関を受診してください。
 一方、何も症状はないけれども、最近、運動不足や食べ過ぎで太ったという方や健康診断で血圧やコレステロール、血糖値などがやや高いと指導された方は前回のコラムで取り上げられた「生活習慣病」の予備軍と考えられます。
 「生活習慣病」はかつて「成人病」と呼ばれていました。歳をとれば誰でもなる可能性のあるものと考えられていたのです。それが、食べ過ぎ、運動不足、ストレス、喫煙、飲酒などの生活習慣が病気の発症に大きく関係していることが分かったために、一九九六年から「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。健康に悪い食生活や嗜好(しこう)を改めたり、毎日少しでも運動する習慣をつけることによって防ぐことができる病気です。
 各地の医師会では地域の方々に病気や健康に関する正しい知識を持ってもらうため、定期的に公開講座を開催しています。内容は特に「生活習慣病」の予防に重点を置いています。塩谷郡市医師会でも二十五日午後一時から矢板市文化会館で「糖尿病とたたかう」「生活習慣病に役立つ運動」というテーマで公開講座を開催します。
 地域外の方でも自由に参加できますので、ぜひこういう機会に生活習慣病について正しい知識を得て日ごろの健康管理に役立ててください。
(問)塩谷郡市医師会 рO28・682・3518)

(岡医院院長・岡一雄)

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認知症の介護
 Aさんは、七十歳代の女性です。夫とは数年前に死別し、共働きの長男夫婦と働いている孫二人と同居していました。いつごろからか、Aさんが外出から帰ってくるのに時間がかかるようになりました。
 家族も変だなと思っていると、まもなく夜間はいかいが始まりました。家族も事の重大さに気づき、長男の嫁が勤めをやめて介護に専念することになりました。当時通院していたかかりつけ医は専門医を受診することを勧めましたが、親類の反対で取りやめてしまいました。親を精神科に受診させることに強い拒否感を抱いている人が田舎にはまだ多いのです。
 嫁は一生懸命に介護しましたが、夜間はいかいはひどくなり、排せつや食事もコントロールできなくなりました。
 そして、介護していた嫁が病気になってようやく専門医を受診しましたが、すでに長男や孫の顔も分からない状態でした。これは不幸な認知症介護の一例です。
 認知症は早期発見、治療が回復度や病状の進行に大きく影響します。初期であれば薬が効くケースも多くみられます。
 また、田舎においては「長男の嫁」あるいは「実の娘」一人へ介護の負担がかかるケースが多くみられます。この例でも、長男や孫たちは介護を手伝わず、他の親族も口先だけの介入のみで、実際に手伝うことはありませんでした。
 介護していない者の辛口で思いやりのない言動は、実際に介護している人をかなり傷つけます。家庭内・親族間の温かい協力や助け合いが必要です。
 長く、楽しく介護をする秘訣(ひけつ)は一生懸命ではなく「手抜き」です。介護保険により利用できる訪問介護のサービスや施設を利用したり、病院に一時期入院させたり、たまには他の親族に介護を代わってもらうことです。
 私自身は、認知症の高齢者の方も、できうる範囲内で(手抜きをしつつ)在宅介護でみてもらうことを理想と考えています。しかし、在宅介護が困難な場合は施設に入所させざるを得ませんし、そのことが本人を不幸にすることには決してつながりません。
 介護の中心人物が倒れてしまっては、皆が不幸になるのです。倒れる前に、冷静になり考えてみてください。ほんのちょっと勇気を出し、考え方を変えることで風景が違ってきますし、あなた自身も生き返りますから。

(佐藤病院・佐藤勇人)

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医療保険と社会保障
 今回は、人々の健康を保持増進するための医療を「保険」で支えるのか、それとも「社会保障」で支えるのかについて考えてみようと思います。
 現在の国民皆保険制度は、戦後の荒廃した社会の中、国民が病に倒れた時に経済的負担も少なく、安心して治療に専念できるように導入されたものです。そのため、もともと社会保障的な意味合いが強い制度といえます。
ところが、前回も触れたように医療の進歩や高齢化により、医療を必要とする人が増加。次第に医療費が増大し、個人の払う保険料だけでは保険財政を賄うことができなくなったのです。
 しかし、本当に日本の医療費は高いのでしょうか。国民総生産(GNP)に占める医療費の割合は、アメリカの14・6%に対し日本は8・5%(二〇〇二年)で決して高いとは言えず、世界でも十八番目です。それでも政府は「医療費は高すぎる」と主張し、二〇〇二年に診療費を下げてしまいました。これには地域の「かかりつけ医」も医療の質が保てないと困っています。
 昨年は医療改革の旗印の下に、混合診療解禁と医療への株式会社参入について、大きな論戦がありました。それは、保険診療の範囲を狭め、自由診療分を拡大して医療費の抑制を図るというものです。
そうなれば確かに保険による診療費は抑制されるでしょうが、自由診療費が大幅に増え、結果として利用者を泣かせることになります。これは医療の現場に貧富の差を持ち込むことで、弱者を切り捨てることになります。
 また株式会社は採算ベースにのらない医療には参入しないでしょうから、過疎の地域の医療は崩壊してしまいます。
 やはり地域医療は社会保障の一環としてとらえていく必要があると思います。本来、医療は誰でも平等に受けられるものであるべきです。そのためには利用者の負担を抑え、国は減らした医療への拠出金をもとに戻すべきです。
具体的には税の配分を見直し、医療に厚くするとか、消費税を医療費に充てるなどの施策が必要と思われます。
 医療の質を下げることなく、地域のニーズに応えられる国民皆保険制度を守って行くことが、今とても重要なことと考えます。

(尾形クリニック院長・尾形直三郎)

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めまいと耳鳴り
皆さんがよく経験するめまいと耳鳴りについての話です。実は私も四十歳を過ぎ、めまいがして診療ができなくなり、診察ができなくなり、二日間診察を休みにしたことがあります。
一概にめまいといっても原因はさまざまです。耳鼻科領域の耳の前庭疾患が原因であったり、心臓の病気や脳神経などの中枢性疾患が原因の時もあります。中には原因が重複するものもあります。
 めまいにも種類があります。「回転型」は自分や周囲、天井などがぐるぐる回ったりするもので、主に耳、内耳の病気です。
「動揺型」は体がふらふらしたり、船に乗っているような感じや宙に浮いているような感じがしたりするもので、脳血管障害やストレスが原因となります。「失神型」は気が遠くなったり、頭から血が引く感じや目の前が暗くなったりするものです。
原因は、血管迷走神経性(過労、ストレス、精神的ショック)や低血圧、低血糖、過換気、熱中症によります。
そのほかに「危険型」と呼ばれるものがあります。これは、めまいのほかに「舌がもつれる」とか「物が二重に見える」などの神経症状を伴うもの、いつまでたっても治らなかったり、症状がどんどん悪くなるもので、すぐ医療機関を受診する必要があります。
では、実際にめまいが
起きたら、どうしたらいいでしょうか。まず、めまいが起きたら@すぐに体を動かさないで安静にするA体を揺するなどの振動を与えないなど刺激を避けるB治ってきても急に動かないでゆっくり動く‐などが重要です。
めまいがひどいときは内科、脳神経外科、耳鼻咽喉(いんこう)科などで診察を受けてください。
次は、四人に一人は経験しているといわれている耳鳴りの話です。静か
なときの表現は「シーン」ですが、これは耳鳴りの音なのです。耳は休もうとしても休めない器官です。大きな音を聞き続けると耳がカーンとして耳鳴りがすることを経験しますが、これは耳の神経が疲労してしまうことによって起きます。一過性ものは八時間ぐらいの休養で回復します。
 耳の中、内耳には音を聞く毛を持った有毛細胞と呼ばれる神経細胞がリンパ液の中に浮いています。この細胞の毛は頭の毛が抜けるようにだんだんと抜けてゆきます。それに伴い耳鳴りや難聴が進行します。ストレス、環境、加齢に加え、遺伝が関係しています。
対策はストレスのある環境を改善したり、適度な運動、安眠、時に耳を暖める(蒸しタオルを乗せる)などがよいでしょう。頭の毛と同じように神経の毛もいたわっていただきたいと思います。

(村井医院院長・村井信之)

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ある老人の死に思う
 脳梗塞(こうそく)で寝たきりとなった妻を七年間、ほとんど一人で介護していたおじいさんがいました。 
 九十歳を過ぎても背筋をピンと伸ばし、さっそうと自転車に乗っている元気なお年寄りでした。
 若いころ、自分が病弱だったために妻にたいそう苦労をかけたそうで、その償いという意味もあったのか、食事の世話から下(しも)の世話までしていました。
 自分が食べるものと同じ食事を一口ずつスプーンで与え、時には吸い口でビールを飲ませることもありました。おばあさんもおじいさんに世話してもらうことがとても幸せそうでした。
 私は二週に一度おばあさんの訪問診療をしていましたが、その度に、おじいさんからはいろいろな話を伺いました。
 二回徴兵の赤紙が来たこと。南の島の戦地ではマラリアにかかり、戦友はほとんど死んで自分だけ生き延びたこと。戦地から引き揚げてからも病弱で長生きできないと観念してお墓をつくったことなど、まるで実の祖父から昔話を聞いているようでした。
 桜が満開に咲く四月の昼下がり、おじいさんの家族から「おばあさんの具合がおかしいのです。おじいさんもおばあさんの傍らから動かず、誰のことも近づけさせません」と連絡がありました。
 私が駆けつけると、おじいさんは「先生はまだ若いから、人が死ぬのをあまり見たことがないだろうけど、人はいずれ死ぬ。それは順番だから仕方がない」と寂しそうにつぶやきました。
 おじいさんはおばあさんの死を知り、私がそれを確認するまでの時間を自分一人のものにしたかったのだと思います。それはおばあさんとの最後の惜別の時間でした。
 おばあさんを自宅でみとった後、おじいさんは自分の役目が終わったかのように急に元気がなくなりました。その年の年末、部屋で倒れているところを発見され、救急車で病院に運ばれました。脳出血でした。そして一カ月余り意識がもどらないまま入院先の病院のベッドで亡くなりました。
 脳出血という病気を考えると仕方がなかったことなのですが、本当はおじいさんの最期も、おばあさんと同じように自宅でみとってあげたかったと思います。
 一般に医者は人の死に慣れていると思われていますが、医者も人間です。できれば人の死には立ち会いたくないのが本音です。しかし、職業柄、病気を治すだけでなく、人の生や死を見つめ、かかわりを持たなければなりません。
 人の死をみとるのはとても難しいことです。患者さんの死に接するたびに、いつもこれでよかったのだろうかと自問しています。

(岡医院院長・岡一雄)

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混合診療
 「保険診療では病院の経営は成り立ちません。厚労省は保険医療費を低く抑えているし。ここはひとつ保険のきかない薬や検査でもうけるしかありませんね」
 「どうやって?」
 「簡単ですよ。患者に『新しい治療法があります。保険は使えないけどどうしますか』と言えばいいんです。命には代えられないので『お願いします』となります」
 「でも、そううまくいきますかね」
 「いきますとも。『保険のきかない薬だけ実費をいただきますが、あとは保険が使えます』と説明すればいいのです」
 このような事態が起こったら、詐欺まがいの医療行為がはびこってしまうでしょうね。
 でも、今は安心です。保険と保険外の治療を併せて行うこと、すなわち「混合診療」は禁止されているからです。ですが「混合診療解禁」を目指している人々もいますので、近い将来は絵空事ではなくなるかもしれません。なにしろ国の内閣府にある規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)が計画しているのですから。
 この規制改革会議では病院の経営にも株式会社を参入させようとしています。そのためには利益を確保しなくてはなりません。というわけで「混合診療」が絶対的に必要となるのです。
 「新しい治療が受けられるなら『混合診療』もいいですね」
 「患者から実費をいただいて、その治療が日本人にも有効か調べられるんだから、国や製薬会社としてもうれしい話だね」
 日本でまだ認可されていない制がん剤を使用すると、診療費全体が自己負担になってしまうので「混合診療」を認めてほしい、という患者さんの主張がひところ盛んに報道されました。
 その結果かどうか、四月から厚労省は「高度先進医療」としていくつかを「混合診療」として認める改定をしました。「高度先進医療」とは素晴らしい可能性があるかもしれない医療ですが、これから治療経験をいくつも積み重ねて、安全性や有効性が確定されていく治療です。このような実験的治療に患者さんの自己負担を求めるのは疑問です。
 ところで、規制改革推進会議は今回の改定を「これはわれわれの求めている混合診療解禁ではない」と言っています。株式会社の医療への参入を狙って、規制改革、混合診療の拡大を来年度には実現したい意向のようです。
 「混合診療」がもっと拡大されると、冒頭のような会話がどこかでされるかもしれません。
 「この病気は保険の薬じゃ治らないよ」と言われて、あなたも医療詐欺被害者に…。

(戸村医院院長・戸村光宏)

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中高年者の運動
 「先生、クロールの呼吸ができなくて」と話す方は、七十五歳の高血圧の患者さんです。私も通うプールでの水中歩行を勧めました。初めはプールの壁を伝い歩くだけでしたが、そのうち水泳のクラスにも入るようになりました。
 友達もたくさんでき、楽しそうに笑いながら練習をしています。七〇`近くあった体重も、一年で六三`、今では六〇`となりました。不安定だった血圧も落ち着き、とても感謝されています。
 最近の健康志向のため、何らかの運動をしている中高年の人が、増えていると言われています。しかし、働き盛りの中年期では、運動不足を感じていても仕事に追われ、時間的余裕がありません。
 そのため定年後の六十歳代から運動を始める人が多いようですが、まず近くの医療機関や健康増進センターなどで、メディカルチェックを受けてください。自覚症状がなくても、病気が隠れている場合があります。
 同時に自分の体力レベルをチェックすることも大切です。若いころ運動をしていた人は、自分の体力を過信しがちですが、何年も運動をやめていると、体力は低下しています。「昔取ったきねづか」は現在の体力に当てはまりません。
 中高年から始める運動は、肥満防止や生活習慣病の予防が目的になります。あまり激しくなく、長時間続けることのできるウオーキング(歩行)、ジョギング、サイクリング、水泳などがお勧めです。ウオーキングは足腰への負担が少なく、いつでも、どこでも、一人でできる効果的な運動です。
 しかし、雨風や冬の寒さ、夏の暑さなどを考えると、天候に左右されないプールでの水中ウオーキングが勧められます。しかも重力がかからないため、ひざに対する負担も少ない利点もあります。
 これらの運動は有酸素運動と呼ばれています。運動を始めると、筋肉細胞の中にあるグリコーゲンという物質が分解され、エネルギーとして使われます。グリコーゲンが無くなると、血液中のブドウ糖が用いられます。次に脂肪細胞の中の中性脂肪が分解され、エネルギーとなります。
 このように、運動をすることにより、生活習慣病の原因となる脂肪の蓄積を防ぎます。また、脂肪を燃やすためには酸素が必要になります。十分に酸素を取り入れ、心臓から全身に血液が送り出されるため、心・肺機能が高まります。
 そのため、肥満防止に役立ち、糖尿病の予防や治療にも有効です。運動は、多少息がはずむくらいで、会話ができる程度のニコニコペースがお勧めです。
 夫婦で、あるいは仲間とニコニコペースで運動して、病気を予防し、これからの長い人生を楽しんでください。

(西内科医院院長・西健太郎)

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白内障
 白内障とはどのような病気なのかご説明しましょう。
 目をカメラに例えますと、レンズに相当するところが年齢とともに濁ってきた状態を白内障といいます。ぼやけて見えたり、まぶしく感じたり。合うめがねがないといった症状がでたらすでに白内障かもしれません。白内障かな? と思い当たるふしがあったら気軽に眼科にいらして下さい。
 とは言っても、眼科では何をされるのだろう、目を触られるのはいやだな、痛い検査があるのかな、手術を勧められたらどうしようなど不安がいっぱいあると思います。
 そこでこの機会に眼科でどのようなことをするのかを簡単にお話しして、少しだけ白内障の手術についてもご説明したいと思います。
 眼科では診察室を少し暗くしてあります。目の中をよく見るためですので心配ありません。また、痛い検査はありませんのでご安心ください。視力検査の後、必要に応じて目の硬さや目の底の異常を調べます。水晶体が濁っているかどうか、専用の顕微鏡で直接目を検査します。これで白内障かどうかはっきりします。
 もし白内障といわれてもびっくりすることはありません。軽い白内障は年齢とともにどなたにも出てくるものなのです。もし白内障のために見えないのであれば、眼科医の説明をよく聞いたうえで、目薬にするか、手術をするのか治療方針を決めます。
 白内障は緑内障や眼底出血などと違い、生活に不自由がなければ、手術が絶対に必要なわけではありません。不自由に感じるようになった時が手術の時期です。
 お仕事をなさっている方だと、早めに手術した方が快適でしょうし、自分の身の回りのことができれば手術などしたくないよ、とおっしゃる方もいるでしょう。ほとんどの場合、治療方針は当人の意向次第ということになります。
 ただ、あまり手術しないで放置していると、水晶体の成分が目の中に溶けだして緑内障になったり、手術が非常にやりづらくなり術後の経過がよくなかったりします。
 そのため、定期的に眼科に通院しながら手術を受ける時期を逃さないようにするのが大切です。
 手術は、目を切られるのだから想像しただけでもさぞかし痛いだろう、と多くの方はお考えのことと思いますが、予想に反して手術の際の痛みはありません。
 白内障手術は私たち眼科医療者からみても改良の余地のほとんどない完成されたすばらしい手術です。いかがでしょうか、すこしは白内障で眼科にかかる際のご不安はとれたでしょうか。

(たかはし眼科院長・高橋雄二)

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成長期スポーツ障害
 三歳くらいの女の子を連れたお母さんが「昼間は元気に遊んでいるのに、夜になるとひざが痛いと泣くんです」と訴えることがあります。診察や検査では特に異常は認められないので「大丈夫でしょう」と言うと「それじゃ、成長痛なのですね」と納得されます。
 医学用語には「成長痛」という言葉はありません。筋肉や骨がまだ出来上がっていない三|五歳くらいの子どもが、夜中に下肢を痛がることはよくあります。
 この場合は「いわゆる成長痛」という言葉で納得してもいいと思われますが、まれに重大な病気が隠されている場合もありますので、一応は「かかりつけ医」に診てもらうといいでしょう。
 一方、小学六年生くらいの男の子を連れたお母さんが「けがをしたわけではないのですが、最近ひざを痛がります。成長痛でしょうか」と言ってくる場合があります。
 この場合は「成長痛」という言葉で片付けるには問題があります。子どもの骨と筋肉はまだ成長途中で未完成ですから、スポーツで無理をすると時に関節周辺にさまざまな障害が起こります。
 その代表的な例がひざの下が痛くなる「オスグッド氏病」です。小学高学年から中学にかけては身長が急に伸び、骨の伸びと筋肉の伸びのバランスがくずれてしまう時期です。そのようなときに走ったり、蹴ったりという激しい運動を続けると、未完成な骨に負担がかかって正常な発育を妨げ、痛みが出てきます。
 運動によって関節を痛めたり、疲労骨折を起こしたりすることもあり、それらを総称して「成長期スポーツ障害」といいます。
 その原因はほとんどがオーバーユース(使い過ぎ)です。このような時にはまず休養することが大切です。身体のどこかが痛いということは、身体が「少し無理だから休ませてください」と訴えているサインだと思ってください。
 私は整形外科医でスポーツ医でもあり、学校医も務めている関係でよくこういう状況に出会います。そして学校保健関係者とこのような話をする機会に恵まれています。
しかし、一般に整形外科医の学校医はまれで、気軽に相談できずに無理して運動を続けてしまう子どももいるようです。もし、子供が痛そうにしていたら一度整形外科医に相談してください。
 子どもたちが心身ともに健康に成長していくためにはスポーツはとても重要なものです。しかし、この時期に無理をしてしまうと、大人になってからスポーツを楽しむことができなくなってしまいます。
 一生涯スポーツを楽しむためには、まず健康な身体をつくることを心掛けましょう。「楽しくなければスポーツではない」というのが私のモットーです。

(西川整形外科院長・西川侃介)

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更年期の話
 のぼせる。
 汗が出る。
 肩がこる。
 頭が痛い。
 疲れやすい。
 いらいらする。
 寝つきが悪い。
 めまいがする。
 これらの症状の中で、いくつか思いあたる方もいるでしょう。「更年期障害なのかな」と感じている方も多いと思います。そこで、よく受ける質問に答える形で更年期について簡単に説明します。
 《更年期はどうして起こるのでしょうか》
 女性は年齢を重ねるにつれて卵巣の働きが低下し、女性ホルモンも減少します。そして月経がだんだん不規則になり、やがて閉経となります。これは自然の現象です。そしてこの状態に慣れるまでの間、いろいろな不快な症状が出ることがあります。このような時期、だいたい四十五―五十五歳までを更年期と呼んでいます。
 この時期は子供も自立し、子育てから解放され、ご自身やご主人の職場環境が変わる時でもあります。心身両面で女性にとって大きな変化がもたらされるために起きると考えられています。
 《病気でしょうか》
 更年期症状は、その種類も程度も期間も人によってさまざまです。女性であれば、誰もが通り過ぎなければならない道ですが、けっして病気ではありません。
 《治療は必要でしょうか》
 この症状がつらくて家事ができない、仕事ができない、やる気がない、家族にあたるなど、生活に支障をきたすようであれば、あまり我慢をしないでかかりつけの産婦人科を受診したほうがよいと思います。更年期症状と思っていても、他の身体的や精神的な病気が隠れているかもしれません。 
 医師に話を聞いてもらうだけでも気が楽になることもありますし、漢方薬やホルモン補充療法などの治療法もあります。治療は説明をよく聞いて納得した上で始めてください。
 《うまく乗り越えるためにはどうしたらいいでしょうか》
 三十歳代から生活習慣に気をつけ、規則的な食生活や仕事、十分な睡眠、休養などを心掛けましょう。適度な運動や趣味の時間などを持つことも重要です。また、家族、特に夫に更年期障害のことを十分理解してもらって一緒に乗り越えてください。
 明るく、活動的な生活を送ることによって更年期の不快な症状を吹き飛ばしましょう。

(大草レディスクリニック院長・大草尚)

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在宅医療
 在宅医療とは、一言で言えば患者さんの住んでいる家、つまり在宅(居宅)で、医療サービスを行うことです。
 医師が患者さんから依頼されて診療に出向くことを一般に「往診」と言いますが、これは急に具合が悪くなった患者さんに対応したものです。一方、慢性疾患の患者さんで、例えば寝たきりなどの状態で医療機関を受診できない場合には医師と患家との間で治療や看護の方針を立てて、定期的な「訪問診療」を行います。
 この「訪問診療」は、一九九二年の医療法改正により、医療提供の理念が明確化され「居宅を医療の現場」と位置づけたことによって始まります。そして、老人保健法の一部改正によって老人訪問看護制度が創設され、さらに健康保険法の一部改正によって訪問看護制度が創設されます。
 そうして、高齢者だけでなく一般医療の対象患者にも訪問看護を実施できるようになりました。居宅(在宅)を医療の場と位置づけて具体的なサービスを実施する体制が整ったといえます。
 その後、在宅医療に関してより多様な医療サービスの提供が可能になり、二〇〇〇年からは二十一世紀の高齢化社会の到来に対応して介護保険法が実施され、在宅(医療)ケアが体系化されました。
 これにより、歯を磨いたり、衣服を着たりするといった日常の生活で行われる動作(ADLといいます)が低下し、外来通院が困難な高齢者には介護保険制度による在宅ケアが、医療の必要な在宅利用者には在宅医療サービスが可能となりました。
 在宅ケアは、かかりつけ医を中心とした保健師などの医療サービス提供者、ケアマネジャーを中心とした介護サービス提供者など多職種により行われます。そのため、相互の役割分担、連絡調整が重要となります。
 また、居宅における医療、介護への安心、安全を担保するためには、地域内でかかりつけ医と病院などが二十四時間のチーム医療体制を組む必要があります。さらに、かかりつけ医も介護保険の在宅ケアへ積極的にかかわりを持ち、在宅における医療と介護の連携をはからなければなりません。
 関係者のチームケアによるこのような在宅ケアは、患者さんの病状が急に悪くなったときでも自宅での適切な対応を可能にし、緊急入院を少なくすることなどが期待されます。
 先ごろ、厚労省は在宅医療をより推進して、在宅死を現在の二割から四割にする方針を発表しました。国は、自宅での診療を希望する患者さんや家族が、安心して在宅医療を受けられる医療や介護体制をさらに整備する必要があると思います。

 (尾形医院院長・尾形新一郎)

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水虫
 今回のテーマは、水虫です。足がじめじめする梅雨や夏ならまだしも、冬に水虫? と思う方が多いかもしれません。
 以前こんな事がありました。二十歳の女性が、足のつめの水虫を治したいと受診されました。何でも、テレビでつめ水虫の治療のコマーシャルを見て、今年こそきちんと治療してきれいなつめにしたいというのです。
 足の親指のつめを診てみると白く濁っており、早速顕微鏡で検査してみると水虫でした。しかし、困った点がありました。それは、相談を受けたのが六月の半ば、八月の夏休みまでの一月半できれいなつめにしたいというのです。最近はみなさんご存じのように、よく効く飲み薬が開発され、つめの水虫の治療も身近になりました。
 しかし、実際に飲み薬の内服を開始してから元のきれいなつめに戻るまで、大体半年前後かかります。これは薬がよく効いても、きれいな元のつめにすっかり生え替わるまで約六カ月前後かかるからです。
 この女性は夏休みに彼氏と海やプールに行く予定があり、何とかきれいな足とつめにしたいとの切実な願いがあったのです。しかし、そうしたことを説明し、泣く泣く今年の夏は間に合わないことを納得していただき治療を開始しました。結局、その夏はかなり色の濃いマニキュアを何度も塗りごまかしたそうです。
 翌年、またつめ水虫のコマーシャルの始まるころ現れた時には、おしゃれなサンダルからきれいなつめと足が! とても健康的で魅力的でした。「今年の夏は期待できそうです」と満面笑みをたたえ張り切っていました。
 さあみなさん、寒くて靴下を履き、足を隠している今こそ、つめの水虫の治療を開始するチャンスです。今から始めれば来年の夏に間に合います。来年の夏こそマニュキュアで隠すことなく、きれいなつめでおしゃれを楽しみましょう。
 また、つめに水虫のない人も、足の水虫を放置しておくとつめも水虫になります。足の水虫だけならほとんどの方が塗り薬で治ります。
 しかし、素人判断は禁物です。足の水泡(すいほう)、かゆみ、赤みなどで水虫を疑い皮膚科を受診された方の三人に一人が水虫以外の皮膚病であったとの報告があります。
 また、水虫と自分で勝手に思いこみ、市販の薬や家族が処方してもらった薬を借用外用し、症状がかえって悪化してから受診される方がいます。
 水虫が心配な方は、専門医で顕微鏡による検査などしてもらい、症状に応じた薬を使いましょう。

(氏家皮フ科クリニック院長・宮崎達也)

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高齢者とリハビリ
 高齢化の進む現代。高齢の方々もそうでしょうが、介護する家族も大変です。さらに十年後には国民の四分の一が六十五歳以上となるのです。
 このような状況の中で、高齢の方々もその家族も、幸せにゆとりを持って暮らしていけることを考えなくてはいけません。元気で自立した生活ができる高齢者が理想となります。そのためには、介護予防が大事になってきます。具体的には、年齢による衰えを補うための体力づくりや脳の衰えを防ぐためのさまざまな取り組みを行うことです。
 その中でも、地域リハビリテーションと呼ばれる活動が介護予防の中心となります。リハビリテーションというと、つらい機能訓練を行うことという印象を抱きがちです。しかし、地域リハビリテーションは一般のリハビリと異なり、今暮らしている生活の中で、健康を維持することが目的です。日常生活と一体になった健康維持のための活動なのです。
 誰でも年を取ると、物忘れが多くなったり、体が重くなってきたりするものです。そんな時こそ、積極的に運動したり、趣味に熱中したりする事が大切です。体を壊したときも自分で好きなことを見つけて楽しむことが肝心です。毎日続けられる「頑張らない」「楽しい」生活リハビリが理想です。
 現在、介護保険では、そのようなリハビリを目的に、デイケアや訪問リハビリテーションなどのサービスがあります。私は、住みなれた環境で散歩や手芸など、楽しく体を動かせるような訪問リハビリに力をいれています。
 また、介護保険の改正で、来年四月からは、軽度の要介護者を対象に筋力向上トレーニングなどの新しい介護予防サービスが導入されることになっています。
 最近、パワーリハビリという、高齢の方や体の弱った方々が、負担の少ない形で行う筋力トレーニングが普及してきています。
 これは軽い負荷で、使われなくなった筋肉の力を回復させるものです。足腰が弱ってきた方が再びしっかり歩けるようになったり、介護の度合いが改善するなどの効果が報告されています。介護予防という点からも期待されるリハビリの手法です。
 私たちがいくつになっても幸せに生きてゆくためには、介護予防をさらに、充実させていく事が必要です。

(尾形クリニック・リハビリテーション科 赤沼 栄)

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医学の進歩
 私が小学校三年生のころの話なので、もう四十年近く前のことです。写生大会でいつも金賞をもらう同級生の男の子がいました。当時、ほとんどの生徒がクレヨンで絵を描いていたのに、彼だけが絵の具を使って水彩画を描いていました。彼の描く風景画は小学生が描いたとは思えないくらいデッサンが確かで、水彩画の持つ透明感が際立っていました。そんな彼の絵は、クレヨン画しか描けない私たちにはひそかなあこがれでした。
 その彼が突然、病気で学校を休むようになりました。ほどなく、担任の先生から、彼の病気について話があり、その時私は初めて「白血病」という病気のことを知りました。
 クラスのみんなで千羽鶴を折り、水彩の絵の具も一緒に持ってお見舞いに行った覚えがあります。彼に会ったのはその時が最後で、その後は彼のお葬式に参列した記憶しか残っていません。
 医科大学を卒業して私が入局した小児科は、白血病の治療を専門としていました。病棟では、小さな子供たちがつらい治療に耐えながら必死にこの病気と闘っていました。そして多くの子供たちは「寛解」という状態になって元気に退院していきました。
 「寛解」とは完全に治ったわけではありませんが病気の勢いを抑えることが出来た状態のこと。長い経過の病気では「治癒」ではなくて「寛解」という言葉を使うことがあります。
そのころ、すでに小児の白血病は必ずしも不治の病ではなくなっていたのです。もう少し遅く彼が生まれていたら、あるいは医学の進歩がもっと速かったら、彼は今でも元気で風景画を描き続けていたかもしれません。
 かつて吉永小百合さんが主演した「愛と死を見つめて」という映画が、あるいは夏目雅子さんが若くして亡くなったことが「白血病は不治の病である」と一般に定着させてしまいました。しかし、最近では、化学療法や骨髄移植などの治療法が進歩したおかげもあり、白血病は高い割合で治る病気となっています。
 医学は確実に進歩しています。例えば二十年前は磁気共鳴画像装置(MRI)という検査はまだ試作段階でしたが、今では気軽に受けられる検査となりました。胃かいようがピロリ菌という細菌で起きることがわかり、その治療が行われ始めたのはつい最近のことです。
 近い将来には遺伝子治療などもいろいろな治療の困難な病気に応用されるでしょう。昨日までは治らなかった病気が今日は治る可能性が出てきています。
 ですから、今どんな難病で苦しんでいたとしても、将来必ず治療法が発見される日が来ることを信じ、決して希望だけは捨てないでください。

(岡医院院長・岡一雄)

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地域の将来
 今年一月から始まったリレーコラムも最終回を迎えました。地域の保健・医療・福祉にかかわるわれわれの姿勢や思い、日常使われている難しい医療用語、現行の医療保険制度の問題点などを「かかりつけ医」の心を通して分かりやすくコラム形式でつづりました。
 われわれの医師会が基幹病院と「かかりつけ医」との連携・役割分担に取り組み、丸三年がたちました。それは、面積は広いが人口も医療機関も少ないこの地域で、人々の期待に応えるには医療機関同士が力を合わせるしかないとの考えからです。
 もちろん、これを成し遂げるには地域の皆さまの協力が必要で、このコラムを通して皆さまとの距離をもっと縮めたい。また、地域の医療の現状と将来について一緒に考えて欲しいと思ったからです。
 下野新聞でも「地域医療が危ない」のタイトルで特集が組まれていますが、われわれの地域も多くの問題を抱えています。ちょうどわれわれがこの事業を始めて間もなく、新臨床研修医制度がスタートしました。
その後、この制度の影響で医師の偏在化が現実となり、頼りにしていた基幹病院では、専門医の引き揚げにより診療科の縮小や閉鎖が相次ぎました。残った医師は過重労働で疲れ、病院の活力が低下したなどの問題が生じてきています。
 一方、それまでは病気の軽い重いにかかわらず患者さんは大病院志向でしたが、大病院は医師不足のためにすべてのニーズに応えられなくなりました。そのため、軽症は「かかりつけ医」へ、重症は基幹病院でという図式が自然にでき、努力しても一向に進まなかった医療連携が促進されたことも事実です。
 これからは「少子化」と「高齢化」は避けて通れない問題です。子供たちが将来健康な生活を送れる習慣を身につけ、増え続ける高齢者が寝たきりにならないように指導・予防するのも地域の「かかりつけ医」の仕事の一つです。
一般的な病気は大病院を受診しなくとも「かかりつけ医」の診療で十分だと思われます。日常の診療の中で、単に病気の治療だけでなく家族や地域の事情まで考慮した小回りの利く、心の通った医療が提供できる、そんな「かかりつけ医」をもっと活用してください。
 この地域の医療連携はまだ道半ばですが、行政を含めた地域の人々の協力で、皆さまに信頼される確かな医療供給システムをつくって行きたいと思います。
 「かかりつけ医」中心の医療連携ができ、子供にとっても高齢者にとっても安心して暮らせる地域にしたいものです。

(尾形クリニック院長、塩谷郡市医師会会長・尾形直三郎)

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