お知らせ

新年のご挨拶

 新年おめでとうございます。

 新春を迎え、会員の皆様におかれましては、益々のご健勝とご多幸をご祈念申し上げますとともに日頃より栃木県医師会の事業運営・推進に対しまして厚いご支援とご指導を賜り心より御礼申し上げます。

 昨年は診療報酬・介護報酬・障がい福祉サービス報酬のトリプル改定がありました。

 メディア等の報告では、診療報酬は1%未満との速報がなされましたが、このままの増加ですと医療従事者の給料にまで影響を及ぼします。2020年度の診療報酬改定が、医療従事者の賃金上昇に見合った増加でないと病院経営は破綻してしまい、やがて地域医療の崩壊に繋がります。

 国の平成30年度の一般会計の歳出総額は97兆7128億円で、そのうち社会保障費は32兆9732億円、全体の33.7%を占めると発表し、医療は11兆8079億円、社会保障費の35.8%占めるとしています。そこで社会保障費では医療・雇用・労災・年金・介護保障・福祉等がありますが、このうち抑制できるのは、医療・年金・介護保険・生活扶助費・児童手当・障害福祉サービス等です。特に医療保険は標的になっております。抑制により国民の健康を維持できるかどうか不明であり、自由診療に向かう施策がとられることで、医療格差が大きくなるでしょう。

 さて、本年3月までには医師の働き方改革の答申がなされますが、この答申の結果で医師の労働時間が制約され、勤務時間、自己研鑽の区別が明確にされますと救急医療に支障を来たし、地域医療の崩壊に繋がり、医師不足により病院や診療科の集約化に繋がりかねません。医学部定員の増員となる可能性が大きいと思います。

 本年度消費税が8%から10%に増税になることは、ほぼ決定と思われます。病院経営にとっては前回5%から8%に増税になったときに十分に補填されたわけでないので、10月には補填が十分に行われるかどうか不明であります。消費税は社会保障に使われるとのことで、導入されたはずでありますが、十分に社会保障に手当されていません。税と社会保障一体改革の原点に戻ってもらうことを希望します。

 地域別診療報酬の話題が財政制度等審議会財政制度分科会(2018年10月9日)から出ていますが、医療費の抑制には効果が少なく、むしろデメリットが大きく、診療報酬が下がれば病院収入が減りますので、医療従事者の給料は上げられず、さらに民間病院の閉院や診療所の経営も厳しくなり、そして調剤薬局にも影響が及びます。したがって、撤退せざるを得なくなり地域医療の崩壊に繋がることは必至です。いくら高齢者の医療の保障についての法律があるからと言って、パンドラの箱を開けてはなりません。皆保険制度の危機となります。この提案者達の皆さんはこれを望んでいるのでしょうね。

 人生100年時代を迎えて、誰もが健康寿命の延伸を願っています。2015年7月に経済界、医療関係団体、自治体等が一体となって、自治体や企業、保険者において、先進的な予防健康づくりの取組みを全国に広げるため、民間主導の活動体として日本健康会議を発足させました。日本医師会は地域版日本健康会議を立ち上げて、都道府県医師会が中心となって実施するようにとのことでありますが、栃木県ではすでに健康長寿とちぎづくり推進条例で県、医師会、自治体、企業保険者、民間100団体が参加して2014年より実施しています。この行事は全国にアピールしてもよい施策です。少しでも健康寿命を延伸し安心して快適な生活を送るようにすることです。10年後にはよい成果が挙がると思っています。企業においても健康経営ヘルスプロモーションの考え方が出てきており、従業員の健康が企業の業績アップに繋がって働き易い環境となり、健康投資が重要であるとの認識が出てきていることは大変喜ばしいことです。

 さて今年の県医師会の事業は日本医師会の掲げる、かかりつけ医の普及・啓発です。かかりつけ医は患者さんの身近な存在として、なんでも頼れ、必要な時には専門医や専門医療機関を紹介でき、地域医療、保健福祉を担う総合的な能力を有する医師です。その能力を維持向上するための研修を多く企画し、医師会の生涯教育研修会に多くの会員が参加できるようにすることです。そのことにより地域包括ケアシステムの1つの歯車となり多職種連携の実践に繋がります。

 もう一つ人生の終り時をどのように考えてもらうかと言うことです。人それぞれ、いろんな考え方があります。早期に本人が家族、友人等に伝えておくことです。いわゆるアドバンス・ケア・プランニング(人生会議)を作製することです。これは、その時期時期で何度でも作製し、自分の意思とは違うことにならないようにすることです。その普及・啓発をすることは医師会の使命と思います。

 新年のご挨拶としては、少々重たい話となりましたが、これからも温かいご支援とご指導を賜りますようにお願い申し上げ、皆様方にとって本年も素晴らしい年となりますことを心より祈念申し上げまして、新年のご挨拶とさせて頂きます。

栃木県医師会長 太田 照男